2023年2月8日(水)

定年バックパッカー海外放浪記

2022年10月16日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年、横浜生まれ。神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

船員募集に長蛇の列

 7月19日。マニラの観光スポットとして知られるエルミタ地区を歩いていたら、逞しい男たちが由緒ありそうなオフィスビルの前で長蛇の列を作っていた。通りかかりの人に聞くと船会社の募集に応募した船員たちであろうとのこと。

 ホステルに戻り船乗りたちに聞くとMagsaysay Maritimeという会社ではないかという。スマホで同社のHPをチェックすると世界最大の「船員手配会社(manning company)」のようだ。要は世界中の船会社からの依頼にもとづき船員を募集して資格・経験などをベースに選考して貨物船・客船に送り込むという人材派遣業のようなものらしい。同社は人材募集だけでなく、船員としての教育・訓練も行っている。そしてフィリピン国内のみならず海外支店網を通じてインドネシア、中国、東欧諸国からも船員をリクルートしている。

 こうした海事関係の乗組員の募集では船長・航海士・機関士など高級船員からコック、一般船員(水夫)まで一隻の商船に必要な人材をワンセットで手配するケースもあると以前海運業界の人間から聞いたことを思い出した。

 Magsaysay社は海事関係の人材派遣業務から出発したが、現在では世界中のホテル、病院・福祉施設、建設現場など幅広くフィリピン人材の海外派遣業務を展開している。

日系商船会社による船乗りの人材育成

 1993年からMagsaysayは香港の船会社及び商船三井と提携してマニラ近郊に商船学校の実習コースを開設。さらに2018年には全寮制のMOL Magsaysay商船大学を開校している。商船三井のプレスリリースなどによると、一学年300人(航海科・機関科各々150人)、優秀な卒業生は希望すれば商船三井の社員としてキャリアを積むことができるという。結果的に卒業生の約半数が商船三井に入社し、残りの半数もMagsaysayグループの斡旋で海外の船会社に就職している。

 他方でジェトロによると、日本郵船は2007年に現地パートナーと共同でNYK-TDG商船大学を設立。既に千数百名の卒業生を輩出し、大半は日本郵船グループの社員として活躍しているという

 ちなみにホステルに逗留している船乗りたちによると、上記の日系船会社の運営する商船大学は学費が安く、実習設備も充実しており、尚且つ卒業後の就職も保証されており、入学試験は高倍率でフィリピンでは超難関アカデミーの一つとなっているようだ。

船乗りは結婚相手として理想の職業?

ダイビングも観光立国フィリピンの重要産業。ダイバーショップ店長とインストラクター資格研修中の女性

 今どきの日本で船員になりたい男子とか船員と結婚したという女子はほとんど聞かない。しかしフィリピンでは船員の社会的地位はかなり高いようだ。 

 フィリピンを旅行していると色々な人から「船乗りは高給取りだ」「9カ月勤務したら3カ月休暇だから羨ましい」「安定した職業だから結婚相手としては最高」というような話をよく聞いた。

 ルソン島北部の世界遺産の棚田で知られるバダック村の農家宿では女将が「長女は豪華客船のパーサーをしているから、帰郷すると外国の珍しいお土産を沢山持ってくるのよ。隣近所にお裾分けしてあげるとみんなに羨ましがられる」と自慢した。ちなみに長女の旦那はマニラで仕事しているので子供二人は女将が預かって育てている。長女の稼ぎの方が旦那よりもずっと多いと女将はニヤリと言った。

 ルソン島の山岳地帯の景勝地サガダの日系三世のヤマシタ氏72歳は「娘のダンナは船乗りだ。現在娘が経営している飲料水供給ステーションも娘の旦那が資金を出して機器類を購入したんだ」と胸を張った。

以上 次回に続く

  
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