2022年12月9日(金)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2022年10月28日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

 人民解放軍総政治部の主任で軍事委員に留任した苗華も福建省出身とされる。何衛東のほかのもう一人の党中央軍事委員会副主席の張又俠は中越戦争の実戦経験を持っている。こうした人事について、台湾では「戦時内閣だ」との声も上がっている。

「処理を誤れば大変な事態に」

 かつて台湾と中国が良好な関係にあった08年から16年までの国民党・馬英九政権下で、台湾との交流を担った中国側の人材は、多くが江沢民元総書記の系統になる「上海閥」や、胡錦濤前総書記の系統になる「共産主義青年団」であり、彼らは台湾側にとっては「現実派」「穏健派」という位置付けで、付き合いやすい相手であった。それは、彼らが中国内部では縄張り争いをしながらも、どちらも鄧小平氏の改革開放の流れを汲んだ人々であり、中国が世界の仲間入りをするためには、台湾問題は「平和的統一」によってソフトランディングで解決されるべきだと考えていた。

 台湾の人々にはあまり人気のない「一国二制度」にすら言及しないようにする配慮を見せる胡錦濤時代のまだ融和的な台湾政策があり、そのなかで、台湾の企業は安心して中国に進出することができたし、台湾社会も選挙で中国との関係改善を唱えた国民党に一票を投じたのである。

 だが、このように台湾に対して「統一か、さもなくば、武力行使だ」と言わんばかりの高姿勢で迫ってくる習近平体制がさらに一強化したことで、現与党の民進党政権は「処理を誤れば大変な事態になる」(国防部長)と分析し、警戒感を一気に高めている。

 
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