海軍では沈みゆくヘリコプターから脱出する方法を教わり、連邦航空局では煙の充満する飛行機から逃げ出すすべを学んだ。水中では、どんな危機に遭遇しても基準点を保ち、激しい動きが止まるまで待つのが大事と知った。サバイバル訓練の生々しい描写は、ドキュメンタリー映像を見ているようだ。
かといって、単に生き延びるためのノウハウを軽々しく並べ立てているわけではない。サバイバーの話を傾聴し、自らも危機に身をゆだねて右往左往しながら、著者自身が「生きる」意味、困難から「回復する」意味を問い続けた記録になっている。
悲惨さを比較することはできない
「本書のルール」として、「だれもがサバイバーである」、「比較は意味がない」、「あなたは自分で思うよりも強い」という三つの考え方がくりかえし述べられる。
東日本大震災のように大きな困難に遭遇した人の前では、自分のありきたりの困難など口にできない。その悲惨さは、味わったことのない者には想像もつかないのだ。被災地を訪ねるたび、そう思っていた。
しかし、だれもがサバイバーであって、「悲惨さを比較することはできない」と、著者はいう。
<そう、逆境はさまざまな形、さまざまな規模で訪れるが、それが現にあなたの人生に起こっていて、あなたの意識がすべてそちらに向けられ、そこにあなたの大事なものがかかっていれば、比較対照することに意味はなくなる。最大の危機とはたった今、この場で起こっているものだ。>
したがって、本書でいう「サバイバー」とは、悲惨さの程度には関係なく、「逆境、苦難、病気、心身の外傷に直面し、乗り越える人」と定義される。そして、ただ命をつなぐ、生きながらえるというのでもなく、与えられた時間を「100%生きる」ことを指している。
その前提で読むと、“サバイバーズ・クラブ”がより身近な存在になり、自分の目の前の問題なのだと感じられる。
事故は避けられる
飛行機では非常口に近い座席に座る。ハイキング中に迷ったら今いる場所にとどまるか、近くの開けた場所を見つける。