2024年11月21日(木)

オトナの教養 週末の一冊

2013年4月26日

 コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行。それぞれの分野で、過去から現在までの技術を総括し、2100年までにどう進歩するのかを描き出している。

 こうした未来予測本はこれまでも数多くあり、世界的ベストセラーになったものも少なくない。しかし、その多くは歴史家や経済学者、社会学者、SF作家、あるいは「未来学者――肝心の科学の知識を直接得ることなく科学の世界を予言しているアウトサイダー」が書いたもので、理論物理学者である著者には、そこが不満だったらしい。

 「本書が異色である理由」は、「この先どんなすばらしい発見が待ち受けているのかについてインサイダーの視点を提供でき、二一〇〇年の世界に対してなにより確かな裏づけのある見方を与えられ」る点であると、著者は自負する。

300人以上にインタビュー

『2100年の科学ライフ』 (ミチオ・カク 著、斉藤 隆央 翻訳 NHK出版)

 著者のミチオ・カク氏は、米国ニューヨーク市立大学理論物理学教授で、「ひもの場の理論」の創始者の一人。『超空間』『サイエンス・インポッシブル』などの著書があり、テレビ番組にも出演しているという。

<私は、この大革命の最前列の席に着き、全国ネットのテレビやラジオで、世界でもトップクラスの科学者や思想家や夢想家三〇〇人以上にインタビューする機会に恵まれた。そしてテレビの撮影班を連れて研究室に入り、人類の未来を変える驚くべき装置の試作品をビデオに収めさせもした。BBCテレビ、ディスカバリー・チャンネル、サイエンス・チャンネルで多くの科学特番の司会を務めるという、数少ない栄誉にあずかり、大胆にも未来を創造しようとしている先見性に富む人のすばらしい発明や発見も紹介した。>

 というわけで本書は、科学者が「インサイダー」として、同僚である科学者たちの「頭をのぞき見」て描き出した未来像を提示している。

 加えて、本書をユニークにしているのは、著者の好奇心。ジュール・ヴェルヌの『月世界旅行』に始まり、テレビや映画では、『フラッシュ・ゴードン』『スター・トレック』『禁断の惑星』『ターミネーター』『スター・ウォーズ』『ブレードランナー』から『X‐メン』『アバター』まで、芸術やエンターテイメントの世界で描かれてきた「未来の科学」をいたるところで例にあげ、予測する世界のイメージを鮮やかに視覚化する。


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