2024年4月19日(金)

田部康喜のTV読本

2022年12月16日

 今年7月から8月にかけて、中国側から北朝鮮国境を映した映像が流れる。そこには、マスク姿の女性兵士が国境沿いに鉄条網を張る作業を続けていた。

北朝鮮の核開発の今

 文書には、金正恩の新しい政治思想のタイトルが躍っているものがあった。

 「わが国家第一主義時代を輝かせていくことについて」と。

 慶應義塾大学教授の磯崎氏は、次のように分析する。

 「ナショナリズムですよね、一種の。貧しさと闘っている人々に対して、世界に誇れるだけの核ミサイルがあるのだという国防力、それを指示している、命じて作らせている金正恩氏、こんな若くすばらしいリーダーがいるのだという体制の宣伝ですね」と。

 その北朝鮮の核開発のいまの状況である。

 米国のミドルベリー国際大学院教授のジェフリー・ルイス氏は、12年4月以降の衛星写真の分析から、北朝鮮は核の「開発」から「配備」の段階に達している、とする。

 「(ミサイルの)発射カ所は当初は少なかった。しかし、いまでは30カ所に拡大している。しかも、鉄道の輸送車両や潜水艦からの発射も可能になっている。大陸弾道弾のICBM級のほかに発射されている、短距離の9種類にも及ぶミサイルは迎撃が難しい」と。

 北朝鮮をウォッチしている米国の研究団体「36ノース」代表・ジェニー・タウン氏の見方はこうだ。

 「核実験は17年の6回目の核実験で、ICBM級を目指して以降、止まっている。しかし、核施設は確実に動いている。7回目の実験の準備に入っているとみている。

 寧辺(ヨンビョン)の核施設は再稼働している。ここの原子炉はプルトニウムを生成している。冷却システムが付近の川に流している排水を衛星写真でみると、昨年夏から原子炉が稼働していることがわかる。この原子炉では、年間に6キログラムのプルトニウムを生産することができる。核爆弾1個あるいは2個に相当する」と。

 局地的な攻撃をする「戦術核」の開発についても、北朝鮮は進めているという見方も強い。

 韓国国防研究院の北朝鮮軍事研究長のイ・サンミン氏は「戦術核は、戦争の相手の基地や軍事目標に対して使用することを想定したもの」と語る。

 9月から10月にかけて、発射されたミサイルは、その戦術核の試験をしているのではないか、とイ氏はみる。

 「こうしたミサイルの射程は、約600キロメートルだった。釜山(プサン)などが射程に入る。(戦闘状態になったら)米軍が上陸すると想定されるプサンを叩くことができる。射程が約350~360キロメートルなら、韓国軍と在韓米軍の基地が狙われる」

 さらに、「韓国の大都市を攻撃するというよりは、韓国の空軍や海軍の戦力を弱体化することを狙っているとみられます」「北朝鮮は、韓米に対して、通常兵器では勝てないため、戦術核を抑止や攻撃のために使おうとしている」と。


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