2024年4月20日(土)

田部康喜のTV読本

2022年12月16日

中国、ロシアとのつながり

 ロシアのウクライナ侵攻と、それに反対しない中国が、北朝鮮の〝先鋭化〟を助けていることに、取材班は切り込んでいく。

 ウクライナの東部ドネツク州を掌握しているとされる、親ロシア武力勢力のリーダーは語る。

 「北朝鮮の建設労働業者は、高い能力を持ち、規律正しく、素晴らしい。復興作業に北朝鮮などから建設労働者を誘致するために交渉を始めている」と。

 北朝鮮とロシア国境でも動きがある。取材班は、鉄道で両国を結んでいる地点について、衛星写真を分析した。11月4日、北朝鮮の線路上に停車していた車両が、鉄橋を越えてロシア側に入ったのである。何を運んでいるかは、この映像ではわからなかった。

 取材班は、船舶の位置情報を発信する「AIS」システムに注目した。本来は、船舶の衝突防止などを狙っているシステムである。北朝鮮からの船舶の動きを追ったところ、北朝鮮最大の港である、中国側に位置する南浦(ナンポ)から、中国・山東省の竜口港へ頻繁に北朝鮮籍の船が着いていた。衛星写真から荷下ろしがされていることを発見。その物質に注目した。

 元・国連安保理北朝鮮制裁委員会専門家パネル委員の竹内舞子氏は、次のように警告を鳴らす。

 「中国に積み下ろされた物質は、(衛星写真を見る限り)石炭の可能性が高い。北朝鮮に対する11年の国連の制裁によって、他国は輸入が禁じられた。国連の安保理事会が、(北朝鮮に対して)断固たる態度をとれない。(輸出によって得た資金で)北朝鮮は、軍事技術を向上させる非常にいい機会になっている。安保理の制裁が最も危機的な状況になっている」と。

 在韓米空軍のトップである、第7空軍のスコット・プレウス司令官は、次のように語る。

 「地域の緊張は高まっている。これまでにない数の挑発行為を憂慮している。米国・韓国・日本は、いかなる挑発行為にも対応できるように日々備えている。私たちの目標の第1は、『休戦状態』を維持することだ。抑止力がカギになる」

 取材班は、質問する。「北朝鮮の行動のどこにレッドライン(これを超えたら即攻撃に移る)を置いていますか?」

 スコット・プレウス司令官は答える。

 「安全保障上の理由で、レッドラインについてお話できない。しかし、すべての準備は整っている」と。

 世界地図の大きな変化のなかで、北朝鮮を多角的に位置づける、今回のドキュメンタリーは、バラバラだと思っているに過ぎないピースを組み合わせて、北朝鮮の〝先鋭化〟の実態をわかりやすく、かつ的確に観るものに迫ってくる。

   
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