2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月30日

 2022年10月25日付のフォーリン・アフェアーズで、元CIA分析官のスー・ミ・テリーが、ウクライナ戦争は北朝鮮に核保有の重要性を一層確信させている、不安を募らせる韓国にはクワッド(日米豪印)の安保対話に参加させるなどの対応を取るべきだと述べている。

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 北朝鮮は今や戦術核の開発に集中しているようだ。2022年4月には多種のミサイルの複数地点からの発射能力を見せつけた。更に、金正恩は9月9日、核の先制使用ドクトリンとも言うべき5条件を発表した。また、北朝鮮の核保有国家としての地位を確定する法案を提出し、再び非核化交渉に入ることは決してないと主張した。

 今の世界状況は、北朝鮮の核・ミサイル開発にとっては好都合だ。米露、米中関係の悪化により、中露が対朝制裁強化で米国等と協力する可能性は低い。10月4日の日本上空を飛行したミサイル発射について、中露は安保理非難決議を阻止した。更にバイデン政権は、ロシアと中国への対応で手一杯で、北朝鮮への対応余力はない。

 韓国では不安が高まり、抑止力強化について、核搭載可能なB52やF35の配備、核シェアリング、米国の戦術核再配備、さらに核保有まで議論されている。米政府がこれらに賛成する可能性はない。唯一の可能性は、核搭載可能な航空機や艦艇の巡回配備であろう。

 戦術核の再配備や韓国の核保有に米国は反対である。仮に核攻撃が必要となる場合も、潜水艦や長距離爆撃機等から発射可能であり、半島の基地から発射させる必要はない。1970年代には朴正熙大統領が秘密で核開発を始め、結局、米国の安全保障の保証と引き換えに中止した。核保有は米韓関係の亀裂になるし、核兵器不拡散条約(NPT)からの脱退等、国際制裁の危険もある。

 バイデン政権は米韓同盟強化のために対応することが必要だ。シカゴ外交評議会は、米韓日豪の間でアジア核計画グループを設立することを提言した。韓国をクワッド(日米豪印)の安保対話に含めることも考え得る。

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 テリーの金正恩分析は概ね当たっているだろう。金正恩は自信を深めているであろう。北朝鮮の歴史は国益を最大にするために中国とソ連(ロシア)の間で巧みに動いてきた成功の歴史と良く言われるが、目下ウクライナ戦争を利用してロシアとの協力を強めているものと思われる。

 しかし5月の韓国の保守、尹錫悦政権の登場により、局面が変わってきたように思える。対話と抑止の対朝政策は、目下抑止強化で行かざるを得ない。その具体的行動の一つが、米韓、日米韓の軍事演習の強化である。これは北朝鮮に相当の圧力になっているに違いない。もう一つ、米国が10月27日の核態勢報告で北朝鮮が核を使えばそれは現政権の終わりになると宣言したことは、北朝鮮も気づいているであろう。


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