2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2022年11月30日

 米韓、日米韓等は合同演習を、偶発衝突が起きないように注意しながらも一層強めるべきであろう。先日の米韓演習延長も理屈があった。

米国が北朝鮮に対し見せる強いメッセージ

 テリーは、韓国内に見られる核シェアリング、戦術核の再配備、韓国の核保有の議論について、「米政府がこれらの可能性に賛成する可能性はない」と説明する。その通りだろう。

 韓国内の安保議論は冷静な軍事論というよりも国内政治論の側面が強い。朴正熙時代に韓国が秘密の核開発を行っていたことは、テリーが指摘する通りである。

 テリーの韓国にソフトな議論に、やや違和感を覚える。テリーは、日米韓豪の間でアジア核計画グループを設立するとのシカゴ外交評議会の提言を好意的に紹介し、「韓国をクワッド(日米豪印)の安保対話に含めることも考え得る」と述べる。しかし韓国を対話国に入れることは考え得るとしても、メンバーにするには慎重な検討が必要だ。

 韓国の参加によりクワッドが脆弱化するようなことがあってはならない。米韓関係は北朝鮮の核問題の一つの側面に過ぎない。

 10月22日、バイデン政権は、国防戦略(NDS)、核態勢報告(NPR)、ミサイル防衛報告(MDR)の三文書を発表した。NPR では、「北朝鮮が米国あるいはその同盟国等に核攻撃をすることを許さず、攻撃をすれば現政権は終了することになるだろう。金正恩政権が核を使用すれば、政権が継続するシナリオはない」と宣言する。

 MDR は、北朝鮮のミサイル開発の進展に言及し、「グアムへの攻撃は米国への直接攻撃と見做し、適切に対応する」と強調する。何れも強い対朝メッセージである。

 最近、北朝鮮の核保有を認めた上でそれに対処すべきだとの議論が散見される。非核化が進まず、他方で核の開発が進む中、多くの者がリスク管理の必要性を認識するも、それを口外することに躊躇してきた。

 蓋しそれは、北朝鮮の核問題をインド・パキスタン型(現実を受け入れ共存する解決)に当方から招き入れることを意味する。引き続き北朝鮮の核は認めないとの立場で対応せざるを得ない。しかし非核化と軍備・リスク管理を並行的に追及することは不可能ではないだろう。

   
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