2024年11月22日(金)

#財政危機と闘います

2022年12月16日

防衛は政府が最優先で担うべきサービス

 そもそも、政府はなぜ国民が汗水たらして稼いだ所得から税金を取るのだろうか。いろいろな考え方があるが、経済学では、基本的には市場は万能であると考えるが、例外的に市場が供給できない財・サービス(公共財)が存在し、市場が解決できない問題も存在すると考えられている。こうした市場の失敗を解決するのが政府の役割なのだ。

 なかでも公共財の供給は政府がやるべき最低限の機能と認識されている。ただし、公共財といっても、政府が供給する財・サービスを公共財というのではない。公共財とは、対価を支払うことなく誰でも消費することができ、しかもある者が消費するからといって他の者の消費を妨げることがない財・サービスを指す。

 これではイメージが付きにくいかもしれない。防衛サービスを例にとると、敵国が攻めてきても話し合いで解決すればいいと防衛サービスの対価を負担しない人がいても、周囲に対価を支払う人たちがいれば、その地域が敵国から攻撃された場合、対価を支払っている人たちのために防衛がなされるため、対価を負担していない者も守られる。しかし、もし、「誰かかが負担してくれるから自分は負担しなくてもいいや」という人が増えれば、防衛サービスを賄うのに十分な費用が確保されなくなり、サービスは供給されなくなってしまう。防衛サービスは国民の生命と財産を守るうえでは必要不可欠なものなので、国が税という形で対価を強制的に徴収し、防衛サービスを提供することとなる。

 こうした公共財は、防衛の他に、警察・消防、司法などがあり、特に純粋公共財と呼ばれる。アダム・スミスは政府の役割はこうした純粋公共財の提供に限定されるべきと考えていた(夜警国家論)。

 しかし、次第に政府の役割は拡大し、本来は民間企業でも提供できるが、政府が特定の財・サービスの消費を価値あるものと判断し、国民に強制的に一定量消費させようとするものもある。例えば、教育や社会保障の一部がそれにあたり、消費を強制する代わりに税金で財源が賄われている。

 つまり、政府の役割に優先順位をつけるならば、まずは国民の生命や財産を守るために必要不可欠な純粋公共財の提供が最上位に位置づけられる。そうすると、防衛サービスは政府が担うべき最上位の項目なのであり、何よりも優先して財源が確保・割り当てられるべき筋のものであるはずだ。

純粋公共財以外の歳出こそ問題にされるべき

 いま、政府が提供している財・サービスのうち、純粋公共財(一般公共サービス、防衛、公共の秩序・安全)がどの程度あるのかを内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算」により試算すると、20年度では25.4兆円である。所得税と法人税だけで30兆円程度の税収があるので十分賄うことが可能であることが確認できる。しかも、まだ5兆円ほど余裕があるので、防衛費を増税することなく賄えるのだ。

 問題は、純粋公共財以外で政府が何らかの価値観や目的から公的に供給している財・サービスの財源をどうやって工面するかである。こうした分野こそ、本当に政府が供給し続けるべきものなのか、支出額は適切な水準なのかなどが詳細に検討された上で、不要であれば削減すればよいし、それでも必要と判断されるのであれば増税を国民にお願いし、理解を得るべきだ。岸田内閣が、優先して財源が手当てされるはずの防衛費のために増税をお願いするというのは、優先順位が違う。


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