北朝鮮の目的をシンプルに整理すれば、それは「あくまでも核とミサイルを握ったまま米朝会談を実現し、経済発展への道に進む」となるだろう。では今回、北朝鮮が6カ国協議に戻ると表明したことで、この目的の何かが揺らいだのだろうか?
答えは言うまでもない。それどころか北朝鮮は「核放棄の約束」を明記した6カ国協議の共同声明を「死滅した」と言い切ったままで、それを修正したわけではない。つまり、北朝鮮が戻ってくる6カ国協議に「核放棄の約束が生きているか否か」は依然不透明だということだ。
よしんば北朝鮮が「核放棄の約束」を確認したとしても、会議としては北朝鮮に奪われたものを「返してもらっただけ」の話である。しかし、そうなればおそらく速報系のメディアは一斉に「北朝鮮が妥協」といったニュアンスでこれを報じることになる。5カ国は実質的「ゼロ回答」にもかかわらず外交的成果を強調するからだ。
10年間繰り返されてきた6カ国協議の正体
北朝鮮はこれにより労せずして自陣を広げてしまえるのだが、これこそ10年間繰り返されてきた6カ国協議の正体である。実際、2003年にスタートして以降、6カ国協議の裏側で“実”を得たのは北朝鮮だけだ。2006年に核実験を強行し、その後3回も核実験を行い、またミサイル実験も実現し、実質的には核搭載ICBMを持つ――現状では疑いではあるが――国になってしまったのである。
一方の5カ国が何も得られなかったこととは対照的である。
もし北朝鮮が困って妥協してきたというのであれば、それは北朝鮮が“核とミサイル”において譲歩したときにのみ使われるべき言葉なのである。その軸を持たずに朝鮮半島情勢を分析しても意味はない。
[特集] 北朝鮮の暴走に、どう対峙すべきか?
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