2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2022年12月24日

中国は「コロナに勝った」と強調

 それにしても、あんなにゼロコロナを堅持すると連呼していたのに、急になかったことにするのはアリなのか? 習近平総書記と中国共産党の権威を傷つけることにならないのかが気になっていたのだが、どうやらそのあたりの理論武装もバッチリらしい。

 12月15日、人民日報に長大な評論「3年にわたる感染症対策、私たちはこのようにして心一つに駆け抜けてきた」が掲載された。著者名は任仲平(レン・チョンピン)。人民日報重要評論の発表に使われるペンネームである。この記事はあまりにも意外な書き出しで始まる。

<工場に鳴り響く機械の作動音、街中は人々でいっぱいだ。道路鉄道を行き交う車、車輌。店には商品が山と積まれ物価も安定している……年末、中国の大地には活力が満ちあふれていた。
 ここにいたるまでの経緯を振り返ろう。この3年、私たちは厳しいコロナとの戦い、歴史に残る試練をくり広げてきた。100件以上もの感染拡大に適切に対策し、5波にわたる世界的流行の波を乗り越え、ウイルスがもっとも凶悪な段階から14億以上もの人民の生命と健康を守った。習近平同志を核心とした党中央は一貫して人民第一、生命第一を堅持し、情勢に応じてコロナ対策を調整し、全党、全国各民族人民を団結させ統率し、コロナ対策をやり遂げた。そしてコロナ対策と経済社会発展で重大な成果を挙げたのだ。>

 感染爆発によって企業活動がままならない状況が広がるなか、なんとわれわれはコロナに打ち勝ったという勝利宣言をしている。そのロジックはこうだ。これまでのゼロコロナ対策は人々の命を守るために必要なものであり、ウイルスが弱毒化するまでの時間を稼いだのだ、と。

 オミクロン株の中国流入から10カ月あまりが過ぎている。今さらの説明だが、この勝利宣言にツッコミを入れる人は誰もいないのが現状だ。

 ちなみにもはやどうでもいいような話ではあるが、中国のゼロコロナ対策はいまだに撤回されたわけではない。というのも、現行のコロナ対策は「コロナ対策ガイドライン第9版」に準拠しており、そのガイドラインには「動態的ゼロコロナを全面的かつ着実に実施する」との文言があるからだ。20日間で2億4800万人が感染するゼロコロナ、というなんとも不可思議な状況に陥っている。

 もっとも、これを不可思議と思うのはごくごく少数で、中国人民の多くは手のひら返しをすんなりと受け止めている。長年にわたり一党独裁が続く国で生きる知恵というべきか。この理不尽な転換も仕方がないと受け止める力が備わっているようだ。

不透明となるコロナ情報

 このまま感染が拡大し集団免疫獲得でコロナ終了、が中国共産党の新たなシナリオだろうが、果たして順調に進むかは疑問がある。感染者のほとんどが軽症、または無症状とはいえ、数億人の感染が社会経済に与えるダメージがどの程度のレベルになるかは不透明だ。いわゆるコロナ後遺症の多発など、想定外の問題が起きる可能性は否めない。

 また、数十万から100万人を超える数の死者が出ることは免れられないだろう。死者の多くは基礎疾患を持つ高齢者とはいえ、多くの人が身近な人間の死を経験することで、政府批判に矛先が向かう可能性はある。

 政府発表では現在の死者は1日数人、時にはゼロという低レベルだが、実態から乖離していることは間違いない。情報は以前にもまして不透明となった。

 ほんの1カ月前には今の中国の状況はまったく予測できなかったわけだが、1カ月後の中国がどうなっているのかも予測しがたい。2023年に入っても不安定な状況が続くだろう。

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