2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年1月16日

 日本近隣での緊張の高まりを考えれば、多様なシナリオ・ベースの図上演習を積み重ね、この法的にも技術的にも政治的にも複雑な問題に対して正面から向き合い回答を得ることが急務である。

もはや日米連携には2+2では狭すぎる

 最後に、3文書で方向性が出た「政府全体」のシームレスで連携の取れた対応をどのようにして実現するかである。国家安全保障戦略は、「研究開発、公共インフラ整備、サイバー安保、日本と同志国の抑止力の向上などのための国際協力を推進し、総合的防衛体制を強化」すると言う。サイバー安保分野の政策を一元的に総合調整する新組織を設置し、日本全体の宇宙に関する能力を安保分野で活用するための施策を進めるための政府横断的仕組みを創設する、と謳う。

 日本政府内の枠組み構築に加え、同盟国米国との連携をどう確保するかは、想像を絶する課題だ。おそらく、もはや2+2(外務・防衛閣僚会合)では狭すぎる。これは「外交・防衛」を越えているのだ。

 加えて、反撃能力取得などの関連で日米防衛協力ガイドラインの改正が急務という指摘もある。もちろんそれは必要ではあろうが、最優先事項かと言えば、そうではないかもしれない。全体像に拘泥するばかりに不必要な時間をかける位なら、(反撃能力の実際の運用までにはまだ数年あることを考えれば)できるところから同時並行的に対処していく方が良いかもしれない。

 以上は課題のほんの一例であり、3文書の実施は困難な長丁場となる。その意味でも、今回の歴史的決断に国民の理解を得る努力も長丁場になることを覚悟する必要がある。

   
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