しかし、今の中国がその豊かさを適正に使っているとは言い難い。周辺国に脅威を与える軍拡に予算を付け、他国の選挙など内政に干渉し、経済発展のためには知財の窃取などをいとわない。平和で安定した地域にマネー外交をしかけ勢力圏を築こうとする。台湾を含む東シナ海・南シナ海の軍事化は、最も重大だ。
中国がこうした振る舞いを是正しない以上、今や、軍事、外交、経済、技術の各分野で具体的な対応が必要だ。中国は、「自分たちは大国になったのだから、大国として大きな軍事力を持ち、勢力圏を築き、その力を展開、行使して当然だ」との世界観を持っているのではないか。そのような世界観は、100年以上遅れている。
中国の成長が続くかは国際社会と協調するか次第
西側、資本主義国側にも一端の責任がある。過去30年あまり世界は、競うように中国に進出した。水門が開かれたように資本や技術が対中投資された。政経一体の中国は、資本主義やグローバリゼーションのナイーブさを利用した。しかし、国際社会の良き一員となるために必要な思考や世界観を持つことはなかった。
今や中国に注文を付け、必要に応じ適正な対応をとることが必要な時代になった。確かにグローバリゼーションに基づく古い議論は依然として有効であり、それに代わるものはないが、新たな議論を加味して、対中関係を管理していく必要はある。
ラックマンは中国の成長は止められないと考えているようだが、成長が今後も続くかどうかは、中国の努力と他の世界の対中関与に依るだろう。中国が国際協調を採れば成功する。成功か失敗かは中国の選択次第とも言える。
米国の対中政策につき、ラックマンは「経済と貿易は、米が最も弱いところだ」と批判する。その通りだ。バイデン政権は、貿易について思考停止していると言わざるを得ない。ワシントン・ポスト紙は1月3日付けで‘America needs a better China trade strategy’(米国はより良い対中貿易閃絡を必要としている)との社説を掲載している。