2022年11月29日(火)

Wedge SPECIAL REPORT

2022年10月6日

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藤本隆宏 (ふじもと・たかひろ)

早稲田大学研究院 教授/東京大学 名誉教授

三菱総合研究所、米ハーバード大学博士課程、東京大学経済学部教授、ものづくり経営研究センター長などを経て現職。専門は技術・生産管理、進化経済学。著書に『日本のもの造り哲学』(日本経済新聞出版)、『能力構築競争』(中公新書)、『現場から見上げる企業戦略論』(角川新書)など多数。

 「Wedge」2022年10月号に掲載されている特集「諦めない経営が企業をもっと強くする」記事の内容を一部、限定公開いたします。全文は、末尾のリンク先(Wedge Online Premium)にてご購入ください。
直近30年間のデータをみれば、日本の製造業が衰退している事実はない (BLOOMBERG/GETTYIMAGES)

 バブル崩壊以降、日本の製造業は衰退したと思っている人が多いようだ。だが、私の印象では、そうした人には、統計データを見ていない、製造現場の実態を知らない、歴史思考が弱い、産業戦略に対する論理思考が弱いなどの問題がある。40年以上、世界の製造業を見てきた人間として、少し意見を申し述べたい。

日本の製造業衰退論は
なぜ誤りか

 第一に統計データの見落とし。政府の経済統計によれば、例えば1990年から2020年の30年間で、日本製造業の実質付加価値総額(15年基準)は80兆円台から120兆円近くに拡大した。同期間の中国経済や米国IT経済の急拡大に比べれば確かに低成長だが、少なくとも「製造業衰退」との事実はない。

 一方、製造業の就業者数は、1990年の約1500万人から2010年には約1000万人に減ったが、以後は下げ止まっている。付加価値総額をこれで割った付加価値生産性も製造業は平均約1100万円で、非製造業の800万円以下を大幅に上回る。

 第二に実態認識の欠如。全国には20万弱の製造業現場が残るが、約2000カ所見てきた筆者からすれば、全体数は減ったが、優良現場は逆境の中で健闘した。

 90年代後半ごろから、生産革新で現場の物的生産性を5年で約5倍に伸ばし、工場閉鎖を免れた国内工場は多い。低成長下で生産性を上げれば余剰人員が発生するが、安定雇用で地域貢献したい中小・中堅企業の経営者の多くは、走り回って余剰人員分の新しい仕事をとってきた。結果、賃金は上がらぬが雇用は概して安定していた。一部大企業は非正規従業員依存度を高めたが、他方で、こうした地道な生産革新・需要創造の努力も確実にあったのである。

 第三に……

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Wedge 2022年10月号より
諦めない経営が 企業をもっと強くする
諦めない経営が 企業をもっと強くする

かつては日本企業から世界初の新しいサービスや商品が次々と生み出されたが、今や見る影もない。その背景には、「選択と集中」という合理化策のもと、強みであった多くの事業や技術を「諦め」てきたとの事実が挙げられる。バブル崩壊以降の30年、国内には根拠なき悲観論が蔓延し、多くの日本人が自信を喪失している。だが、諦めるのはまだ早い。いま一度、自らの強みを再確認して、チャレンジすべきだ。

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