英フィナンシャルタイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、1月2日付け同紙の論説‘Stopping China’s growth cannot be a goal for the west’で、中国の成長を止めることが西欧の目的であってはならない、抑止と貿易は併存すべきだと述べている。主要点は次の通り。
今、世界の政策形成者の間で二つの対中政策論が対立している。
一つはグローバリゼーションに基づく古い議論で、経済を強調し、中国の言う「ウィンウィンの協力」を強調する。安定と成長は全ての者の利益であり、それは気候変動などの国際協力を助長すると主張する。
新しい議論は、中国が豊かになることは中国の脅威の増大になると主張、「中国が野心を変えるか、またはそれを阻止しない限り、世界の平和と繁栄の脅威になる」とする。
対立する双方の議論に真理がある。
中国をもっと貧乏にするとかその発展を阻むとかではなく、中国が豊かで力を持った国になっている今の国際環境に焦点を当てるべきだ。目的は、中国に攻撃的な政策の追及が得にならないと思わせるような国際秩序をつくることだ。
そのようなアプローチには、軍事、技術、経済、外交の要素がある。米国は、日本やインド、豪州などとの間で安全保障関係強化を効果的にやっており、それは中国の軍国主義化の阻止に役立つ。中国が世界の技術標準設定者にならないようにする努力も強まっているが、経済的な自己利益喪失の恐れから同盟国間の調整はますます難しくなるだろう。
経済と貿易は、米国が最も弱いところだ。中国は、既にインド太平洋のほとんどの国にとって最大の貿易相手国になっている。米国の保護貿易的なムードが増大し、米国がアジアでの新たな貿易合意を結べないでいることは、米の対応の貧弱さを示している。
米欧は、中国を豊かにさせないことが目的ではないことを内外に明白にすることが重要だ。目的は、中国の豊かさが周辺国に脅威を与えたり、貿易相手国を脅迫することに使われたりすることを阻止することであるべきだ。
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一見平易に見えるが、重要で核心的な議論だ。ラックマンの見方は基本的に健全と言うべきであろう。ラックマンが挙げている新旧二つの議論は紙一重で、双方に理屈がある。
それゆえ、対中政策はレトリックだけでは不十分で、具体的政策こそ重要である。中国の発展は現実であり、それ自体は問題にできない(中国は西側が中国の発展を受け入れていないと見るようだが)。