2023年6月3日(土)

プーチンのロシア

2023年2月17日

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佐々木正明 (ささき・まさあき)

ジャーナリスト、大和大学社会学部教授

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業後、産経新聞社に入社、大阪社会部、モスクワ支局長、リオデジャネイロ支局長、運動部次長、社会部次長を歴任。特派員として五輪・パラリンピックやサッカーW杯を取材した。2021年春から現職。著書に『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)、『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)。

活発化するアジア、アフリカへのプーチン外交

 国連総会では昨年、2回にわたって対露非難決議の採決がとられた。いずれも賛成国が圧倒的多数を占めるのだが、3月4日に行われた露軍の即時撤退を求める非難決議では反対票が5カ国(ロシア、北朝鮮、ベラルーシ、シリア、エリトリア)に対して、棄権国が35カ国に上った。

 10月13日に行われたウクライナ南部・東部の4州併合に関する非難決議では反対票が5カ国(ロシア、北朝鮮、ベラルーシ、シリア、ニカラグア)に対して、棄権国数は同様に35カ国だった。

 棄権した国々には、ロシアとエネルギー、食糧、武器輸出などで密接に結びついているアジア、アフリカ諸国が多い。アジア方面では、中立をかかげる中国やインドのほか、モンゴル、ベトナム、ラオス、スリランカなどの国々が投票2回とも棄権にまわっている。

 アフリカ諸国でもロシアの武器輸出国として上位に入るモザンビーク、スーダン、中央アフリカなどがどちらの回の投票も棄権した。

 ウクライナ侵攻後のプーチン首脳会談でもこの状況が裏付けられている。

 アジアでは中国が9ポイント(全体14位)、インドが7ポイント(全体15位)となった。両国とも対露制裁に加わらず、石油・天然ガスを輸入して、ロシアの国家財政を支えている。両首脳はウクライナ侵攻の緊迫化に伴う要の時期にプーチン大統領と会って、今後の対応を話しあっている。

 モンゴルのオヨーンエルデネ首相は9月、露極東ウラジオストクを訪れ、プーチン大統領と中国の習近平国家主席とともに、モンゴル経由の露産天然ガスの供給プロジェクトについて協議した。西側の制裁逃れのロシア支援の枠組みは確実に前進している。

 アフリカ諸国は会談回数は少ないものの、プーチン大統領は欧米とは一定の距離を置くセネガル、ギニアビサウ、マリ、中央アフリカ、アンゴラの首脳と会談し、露産の資源や食糧などの供給体制について話しあわれている。


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