一方、欧州や北米・南米ではポイント低下が顕著になっている。フランス、ドイツ両国のポイントが高いのは、両国首脳が開戦前後に侵攻を止めるよう、プーチン大統領に説得を試みたから。同様にウクライナ・ロシアの仲裁国となったトルコのエルドアン大統領は侵攻後、プーチン大統領と直接会談4回、電話会談は13回行って、なんとか休戦・停戦に持ち込もうと接触を増やしている。
プーチンの誕生日を祝福した国は?
10月7日はプーチン大統領の誕生日だ。毎年、この日を祝う親露国の首脳がおり、ウクライナでの戦闘が激化する中で70歳の節目となった昨年も親露国首脳から祝福のメッセージが寄せられた。
BRICSの枠組みを通して親交を深めてきた南アフリカの首脳からはここ10年、プーチン大統領の誕生日を祝福することはなかったが、昨年にはラマポーザ大統領がクレムリンに電話をつなぎ、祝意を伝えた。
キューバのディアスカネル大統領は侵攻前の21年にはプーチン大統領に電話をかけてこなかったのに、22年には電話で直接、祝福のメッセージを送っている。ディアスカネル氏は翌月の11月にクレムリンを訪れ、「不公平で一方的な制裁を科してくる(ロシアとの)共通の敵」と米国を非難。ロシアのウクライナ侵攻を支持する立場も示した。
一方で、プーチン氏は昨年12月30日に、各国に新年のメッセージを送っている。露大統領府の公式サイトには、どの国にどんなメッセージを送ったか、詳細に記されているが、これらの国は現時点で、ウクライナ支援をめぐって西側諸国と一線を画している。公式発表に記載されている国々の羅列は、米国主導の国際秩序に反対する「親露国リスト」と言っても過言ではないだろう。
全20カ国で、内訳は旧ソ連諸国が8カ国(アゼルバイジャン、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)、中南米5カ国(ブラジル、ボリビア、ベネズエラ、キューバ、ニカラグア)、アジア3カ国(中国、インド、ベトナム)、欧州2カ国(ハンガリー、セルビア)、中東2カ国(トルコ、シリア)となっている。
さらに各国首脳に加え、元イタリア首相のシルヴィオ・ベルルスコーニ氏、元ドイツ首相のゲアハルト・シュレーダー氏、元アルメニア大統領のロベルト・コチャリン氏とセルジ・サルキャン氏、元カザフスタン大統領のヌルスルタン・ナザルバエフ氏の5人にも新年のお祝いメッセージを送っている点も注目に値する。プーチン大統領の判断に影響を与えかねない有力政治家とも言え、特にベルルスコーニ氏とシュレーダー氏はウクライナとの停戦交渉に入る際に背後で一定の役割を果たす可能性は捨てきれないだろう。
グローバルサウスの国々の動向は今後のウクライナ情勢の行く末を左右するにちがいない。西側諸国はこれらの国々に対して、対露制裁に加わるよう働きかけており、ロシアとの激しい綱引きが行われている情勢にもある。
侵攻2年目も西側諸国に負けまいとするプーチン政権は自国産のエネルギーや食糧の安値供給をダシにして、グローバルサウスの国々に積極的外交をしかけていくことになるだろう。
ロシアのウクライナ侵攻は長期戦の様相を呈し始め、ロシア軍による市民の虐殺も明らかになった。日本を含めた世界はロシアとの対峙を覚悟し、経済制裁をいっそう強めつつある。もはや「戦前」には戻れない。安全保障、エネルギー、経済……不可逆の変化と向き合わねばならない。これ以上、戦火を広げないために、世界は、そして日本は何をすべきなのか。
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