2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年3月3日

 最後に③についても明るい材料が見当たらない。経済成長を支えてきた不動産業が不振である。すでにバブル状態にあり、今後人口が減少して不動産需要が縮小していくことを考えるとその好転は難しい。

 さらに、第14次5カ年計画(2021~25年)で経済を牽引すると期待されてきた新興産業も伸び悩んでいる。新興産業の不調については、政府のITプラットフォーマーや教育産業などへの強い規制政策が原因となっており、この点で政府のスタンスが矛盾していることも不安材料である。

経済好転への3つの壁

 2023年において経済の好転を図る鍵は、3つある。

 第1は、不動産市場・産業の立て直しである。ことは、報じられてきたような不動産企業の立て直しに留まらない。バブルを解消し、不動産に滞留する資金の流れを正常化しなければならない。

ただし、日本がバブル崩壊期に経験したような混乱を避けようとすれば、中央政府の財政出動により不動産価格下落の景気下振れ圧力を緩和する必要がある。その場合、中央財政の赤字拡大が要注意事項となる。

 第2には、地方財政の立て直しである。不動産頼みの地方財政の危うさについては既に指摘したが、さらにゼロコロナ政策で地方政府に負わされた負担が加わる。中国メディアの報道によると、支出の多かった広東省711.39億元(約1.35兆円)をはじめ報じられた8省合計分だけで2082億元(約3.95兆円)に達している。

 インフラ建設から民生まで大きな役割を担う中央財政の立て直しは急務である。ただし、景気が低迷する中、それは容易ではないだろう。

 第3に、そして最も重要なのは、コロナ禍の中で冷え込んだ消費マインドの転換を図ることである。財政出動による景気下支えだけでなく、民営経済政策の転換が求められているように思われる。

 「民営経済は税収の50%超、GDPの60%超、イノベーションの70%超、都市部雇用の80%強、企業数の90%を占めている」(劉鶴副首相)。国有経済を重視する習政権であるが、この現実からスタートする必要がある。

 ここまでで分析してきたように、求められているのは、短期的課題と中長期的課題に同時に取り組むことである。中国政府の舵取りは、これまでになく難しい局面を迎えているといえよう。

 
 エマニュエル・トッド氏が「Wedge」2021年10月号のWedge Opinion Special Interview「中国が米国を追い抜くことはあるのか エマニュエル・トッド 大いに語る――コロナ、中国、日本の将来」で、今後の中国社会のあり方について語っている。この記事単体をアマゾン楽天ブックスの電子書籍「Wedge Online Premium」でもご購読いただくことができます。
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