2024年7月27日(土)

プーチンのロシア

2023年3月13日

 日本では最近、「卵が高い」という悲鳴が上がっている。戦争をやっているロシアで、22年に卵がむしろ値下がりしていたというのは、われわれにはショッキングだ。実はこれも季節的要因が大きく、ロシアでは夏になると卵および鶏肉の価格が12~15%低下すると言われている。日本における卵の価格変動は需要の増減によるところが大きいようだが、ロシアでは養鶏の生産コストが冬場に上がり夏場に下がることが原因ではないかと思う。

ロシアの強みと弱みを見せる

 食品以外の商品の値動きを示した図3では、まず開戦直後の家電の値上がりが激しかった。家電は外国メーカーに依存する部分が大きく、ロシアで現地生産されていてもコンポーネントは大部分輸入である。ゆえに、開戦ショックで供給不安が広がり、ルーブル暴落の影響も受け、値段が跳ね上がった。

 危機に直面するとお金をモノに代えて資産を守ろうとするロシア国民特有の行動パターンも影響したかもしれない。その後、価格は沈静化していったが、以前と同等の商品は入手しづらくなっているかもしれない。

 ロシアでは医薬品も輸入依存度が高く、「ロシア国産」とされていても輸入原薬をパッケージしているだけだったりするので、家電と似た値動きを示した。石鹸・洗剤などもやはり製品または原料を輸入に頼っている分野であり、開戦後に非常に高くなった。

 逆に、図3で異常な安定振りを見せているのが、ガソリン価格である。ロシア政府は、22年に原油の輸出が不安定化した分、補助金も投入して国内の石油精製を奨励し、石油製品の安値安定を維持した。23年3月現在、ロシアにおけるレギュラーガソリンの価格はリッター0.64ユーロで、これは欧州諸国の中で断トツに安く、欧州連合(EU)諸国は軒並みその倍以上である(たとえばドイツでは1.90ユーロ)。産油国としてのロシアの強みが端的に表れている分野と言える。

 最後に、サービスの料金動向をまとめた図4を見ると、暖房費、電力料金が横這いだった時期が長かったことが見て取れる。これは当然、政府により統制されているからだ。政府は物価全般に合わせて、原則的に半年に一度、公共料金の見直しを行っている。

 22年12月の引き上げで、暖房費は侵攻開始前から13.9%増に、電力料金は13.5%増になった。ロシア国民はこれでも不満だが、欧州あたりで空前の光熱費値上げが生じていることに比べれば、恵まれていると言えよう。なお、ロシア政府は現行料金で1年半据え置き、次の値上げは24年7月になるとしている。


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