論説のタイトルには「インドネシアがアジアの未来を決める」とあるが、インドネシアは既に「アジアの未来」に大きな影響を与えており、今後はアジアを越えて「世界の未来」に大きな影響を与えるようになるはずである。
インドネシアは2040年代には日本のGDPを抜き世界第4位になることが確実で、世界的問題につき日米欧と中露が両極の立場を取る中で、その中間に位置するインドネシア、インドの両大国の立ち位置が世界の多数派の趨勢を決めることになる。
論説中、領土の一体性との関係で「パプア独立運動は未だ暴力的軍事占領と闘っている」との記述があるが、これは米国的ステレオタイプな見方である。1960年代初頭のパプアのインドネシア併合は国連主導で行われ、各種国連決議を根拠とし最大の国際的正統性があり、この点、東ティモールとは根本的に異なる。
確かに現在も「独立運動」があり、時に死者を出す衝突があるのは事実だ。しかし、世論調査の結果は、「独立」は新たな最貧困国を作る道だとパプア住民の多数が痛感していることを示している。「独立活動」の実態はインドネシア国内格差是正要求であり、それはそれとして対処を要するが、「独立運動」活動家の中に真剣に独立を考えている向きはほとんどないと言う見方が主流だ。
日本も米国との軍事演習に参加
論説には「米国主導」のスーパーガルーダ・シールド共同訓練に各国と共にインドネシア陸軍が「参加した」とあるが、これは事実誤認である。米国とインドネシアは、スーパーガルーダ・シールドを毎年共同開催しており、これに、地域の各国と地域に利害や関心を持つ国々が参加している、というのが正確である。インドネシアは単なる参加国ではない。
なお、スーパーガルーダ・シールドは、従来は陸軍間での合同訓練であったが、昨年は海空軍を含めた総合訓練として実施された。昨年は日本の陸上自衛隊もスーパーガルーダ・シールドに初めて参加し、インドネシア、米国と空挺団の落下訓練を、第二次世界大戦時に日本がインドネシア侵攻を始めたスマトラ島パレンバンで実施した。これは3国の強い信頼を示すことになると思われる。