2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月8日

米沿岸警備隊と並ぶインドネシア海上保安機構の船舶(DVIDS)

 ウォールストリート・ジャーナル紙の1月11日付け解説記事‘Indonesia Risks Confrontation With China Over Gas Project in South China Sea’は、最近インドネシアが、南シナ海の同国の排他的経済水域(EEZ)で、中国が南シナ海の境界線として一方的に主張する「九段線」内と重なる海域での外国企業による海上ガス田開発を承認したことを、中国の拡張主義への対抗の一環として解説している。概要は次の通り。

 南シナ海でインドネシアは中国の拡張主義を押し返している。1月初め、インドネシアはナトゥナ諸島近海での大規模ガス田開発計画承認を発表した。ガス田はインドネシアのEEZ内にあり、国際法上は同国に開発権限がある。しかし中国は南シナ海のほとんどに権利を主張しており、中国から約1000海里離れたこの海域もその一部だ。

 中国はこの種の海上プロジェクトに対し中国海警局や武装漁民の派遣で応じ、リスクを高めている。中国はナトゥナ諸島の領有権は主張していないが、周辺海域で漁業を含む海洋権益を主張。2016年にはナトゥナ海域の中国漁船をインドネシア当局が拿捕するのを中国海警局が阻止した。

 これを受けインドネシアは同地の軍事的経済的プレゼンス強化に努めた。2018年にはインドネシアは大ナトゥナ島に軍司令部を新設し、海・空双方で警戒を強化。ナトゥナ諸島の水産物のジャワ島への海上輸送、漁船修理などの訓練も開始した。

 2019年には200トン規模の冷蔵施設や漁網修繕所がある漁業センターを作り、手付かずの自然が残る島へのヨットツアーを進めている。

 ガス田開発はこのような戦略の一環で、中国を苛立たせてきた。2021年にはインドネシアから免許を得た会社が「ツナ・ガス田」の探鉱用試掘のため派遣した掘削装置は、中国の中国海警局船舶に追尾され、これに対しインドネシアは海軍と法執行機関の船舶を派遣し、中国船舶を追跡した。

 それにもかかわらず、英国企業は探鉱用ガス井2本を試掘し開発段階移行を決定。これをインドネシア政府は承認した。専門家によれば、インドネシアの決定は、中国の脅しに対抗する決意を示すものだ。中国は再度嫌がらせをするかもしれないが、インドネシアは物理的対応未満の行為に屈することはないだろう

 インドネシア政府は2021年の事件にはコメントしておらず、南シナ海での中国の行動についてほとんど語らない。これは最大の貿易相手との関係維持努力の一環だ。同国が中国の侵入を強調しない結果、中国対抗のための近隣諸国との効果的協働が妨げられていると言う専門家もいる。

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 南シナ海を巡るインドネシアと中国の関係についての興味深い記事だ。ここにも、ここ数年の中国による「やり過ぎ」の影響が見て取れる。

 上記の記事も指摘するように、ナトゥナ諸島自体は中国が一方的に主張する九段線の外(南側)にあり、さすがの中国もその領有権は主張していないが、同諸島の周りの200海里のEEZの北側部分は九段線と重なり、好漁場でもあるその海域に中国が権益を主張している。

 元々は中国も、地域の大国であり領土問題の係争相手ではないインドネシアとあえて事を構えるには慎重で、以前は、主にインドネシア側の反応をチェックすることを目的として、数年に一度、その度に少しずつ対応をステップアップしながら周辺海域に出没していた。


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