フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのラックマンが、12月5日付同紙に‘Australia, China and the judgment of the Solomons’と題する論説を書き、ソロモン諸島を巡る中国と米豪の争いを描写し、米豪が同国の第二次大戦不発弾処理を支援し好感を得るのも一案、と指摘している。要旨は以下の通りである。
南太平洋のソロモン諸島は、今や中国と西側の戦略的競争がぶつかる場所で、4月のソロモン・中国安全保障合意署名は、米豪への警告となった。数十年にわたる急速な軍備拡大で中国海軍は米国海軍より多くの艦船を保有し、習近平主席の下、既に南シナ海に軍事基地を構築している。中・ソロモン合意は主に国内治安に関するものだが、米豪は中国が南太平洋に海軍基地を建設しようとしており、その最もありそうな場所がソロモンではないかと恐れている。
ソロモン諸島は第二次世界大戦最激戦のガダルカナル戦の舞台だった。米軍が日本と闘ったのは今日ソロモン諸島が戦略的に重要と見られているのと同じ理由で、豪州、東アジアと米国西岸とのシーレーンに位置しているからだ。
中国が太平洋の米軍事力に直接挑戦するとすれば、最もあり得る対象は台湾だ。米豪高官は、習近平下の中国が今後5年の内に台湾へ侵攻乃至封鎖を試みる可能性は相当あると見ている。豪州では、米中戦争が起これば豪州は巻き込まれるという想定が広く共有されている。南太平洋に中国基地があれば、豪州の戦略的計算は大いに複雑化する。
最近の習・アルバニージー会談は6年ぶりで緊張を若干緩和したが、引き続き米豪は中国がインド太平洋の席巻を決意していると見ており、それを防ごうと決意している。それを最も明確に示すのが昨年の米英豪の安全保障枠組み「AUKUS」創設であり、その核心が豪州の原潜取得だ。中露はAUKUSを好戦的と批判したが、豪州は、力の均衡を維持し平和を護るためだと反論する。しかし、インド太平洋の隣国にそう主張するのはリスクがある。例えば、インドネシアのジョコウィ大統領は、同国は新冷戦の駒になるつもりはないと言っている。
地域的影響力を巡る競争で中国は一定の優位にある。中国はインド太平洋のほとんどの国の最大の貿易相手だ。ソロモンのような貧困国では、中国の富は富裕層による援助の横取りも可能とする。今や米豪もソロモンへの影響力向上に努めている。米国は近々大使館を開設すると発表。豪州はソロモン警察に車両とライフル銃を提供した。一方、同警察の人員は中国で訓練を受けてきている。
ソロモンは今の地政学に対応する一方、第二次世界大戦の遺産に悩まされている。未だ散乱する不発弾で命を失う人もいる。AUKUS加盟国はソロモンの好感を得るために、その処理に取り組むのも一案かもしれない。
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4月の中・ソロモン安全保障合意を受けた付け焼刃は否めないが、南太平洋島嶼国の戦略的重要性に鑑みれば、最近米国が関心を高めているのは結果として良いことだ。本来は豪州の責任範囲だが米豪連携は必要で重要だ。