2024年12月3日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年2月8日

 しかし、ここ数年は毎年のように大漁船団が押し寄せ、それを中国海警局が支援するようになっている。それを受け、インドネシア側の現地での軍事・経済各側面での体制強化も格段に進んだし、元々親密ではない両国関係をさらに緊張させる要因の一つとなっている。正に、日本や米国にとっては敵失である。

進む日米インドネシア3カ国の協力

 実は、日本は、インドネシア政府から頼まれ、ナトゥナ諸島を含むインドネシアの戦略的に重要な国境周辺の離島開発に協力している。インドネシア側によれば、これは日本にしか頼めない(中国には頼めない)重要案件ということで、日本側も戦略的意義を認め、着々と協力を進めている。

 具体的には、まずは現地経済の底上げだ。この記事が触れるような漁業センター建設支援を行い、その成果を見た上でその後についても考えるということだ。

 これに加え、ナトゥナ諸島では日本は観光産業育成のための現地調査も実施し、巨石が海岸周辺にある珍しい景観や周辺に多くあるダイビングスポット活用とそのための方策についてインドネシア政府に提言を提出している。この記事が指摘する各種プロジェクトの背景には日本の努力と協力があるのだ。

 もう一つ、この記事が触れていない点について言えば、実は、米国もナトゥナ諸島の戦略的重要性を認め、そこに空港を作るプロジェクトへの関心を表明している。それを踏まえて、ナトゥナ諸島開発を巡っては、日米で戦略的方向性などを含めた意見交換・情報交換を実施しており、実際上、日米インドネシアの三カ国の間の共同プロジェクトのような様相を呈している。

 その関係でいえば、最初に述べた中国の「やり過ぎ」の結果、インドネシアのナトゥナ諸島に対する立場は、上記の記事が言うほど対中考慮にのみ偏ったものではなく、非常に明確かつ強硬になってきている。

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