2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年3月20日

 中国人富裕層マーケティングや日本企業に対中コンサルティングなどを行う都内の企業、行楽ジャパンが22年11月に行った「5年マルチビザ保持者(富裕層)」に対して実施したアンケート調査の結果にも、その傾向は表れている。

 同調査によると、「主にどんなものを買いたいですか」という問いには「化粧品」、「ブランドの服・アクセサリー」、「酒類」などの回答が多く、ほかに「お菓子」「自分が好きなもの」「スキー用品」などの回答もあった。いずれも大量買いを目的としたものではなく、個人の趣味に合う消費であることがわかる。

 ほかに、「日本でどのような宿泊施設を体験したいですか」という問いには「温泉旅館」という回答が全体の8割以上からあった。希望価格帯も日本円で2万~5万円が約6割以上で、彼らは日本の高級温泉旅館に興味を示していることが読み取れる。

 「コロナ後に日本で体験したいこと」との問いには「高級日本料理」「スキー」「美術館や博物館」「登山やキャンプ」との回答もあり、消費したいものは、完全にコト消費へと移行している。

他国への観光も進む中での日本の評価は?

 むろん、中国人の海外旅行熱は日本だけでなく、他の国・地域へも広がっている。今年の春節、中国から日本への渡航は、日本政府が厳しい水際対策を行ったこともあり、予想より伸び悩んだ。その代わりに人気があったのはタイだった。タイは国を挙げて中国人観光客誘致に乗り出しており、距離的にも近く温暖なことから、中国人のタイ旅行も人気がある。

 だが、冒頭で紹介した中国人はこういう。

 「海外旅行が本格的に復活したら、とくに富裕層は至るとこころに行くでしょうが、中でも日本は特別な存在ですよ。距離的に近いだけでなく、安全で美味しい食事、温泉、SNS映えするスポット、すばらしい文化がたくさんある。日本の不動産に興味のある人も大勢いる。そんなふうに3拍子、5拍子揃っている国はそう多くはないですから」

 コロナ禍での3年間、中国各地には本格的な日本料理店やラーメン店、日本スタイルの焼き肉店が急速に増えた。日本酒の人気もすさまじく、「日本に行けないので、せめて日本の雰囲気だけでも味わいたい」といって、日本酒をコレクションする人も増えている。このように、中国人の「変貌し続ける需要」を見極めることが、今年、インバウンドの再開を待ち構える上で必要になるといえそうだ。

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