一方、団塊の世代の定年退職が始まった2007年(いわゆる2007年問題)以降は、今度は自分たちが負担しなくてもよくなった社会保険料の引き上げによる財源調達を、自分たちも負担しなければならなくなる消費税の引き上げよりも好んでいるだけなのだ。それがいつのまにか、「消費増税は景気の腰折れを招き選挙に負けるからタブー」「社会保険料の引き上げは将来の給付につながるので反対が少ない」と曲解されたのだろう。
景気は、消費増税だろうが、所得増税だろうが、社会保険料引き上げだろうが、国民の負担が増せば失速することに違いはない。ただ違うのは、それぞれの施策によって影響を受ける層だ。各種負担増によって影響を受ける層のなかでもひときわ声の大きな層に政治がなびくのである。
本当の意味での「世代間連携」を
このように、現実は政治的な影響力の大きい団塊の世代の都合に振り回されているだけであり、そこには国民経済や世代間連帯なんていう発想は皆無に等しいと言えよう。
こうした現実を直視せず、まず最善策としての社会保障のスリム化、そして次善の策としての消費税引き上げをやりたくないから「基金」構想に逃げるというのであれば、これまで抜本的な社会保障制度改革から逃げ回ってきたのと同じで、「異次元の少子化対策」など画餅に帰す。
今まで真正面から社会保障の削減に向き合ってこなかったツケが今の「異次元の少子化」につながっていることをしっかり直視し、猛省すべきだと思うが、「異次元の少子化対策」に国民の目を向けることで、これまでの失敗を糊塗したい当局と、極力自分たちの負担増は抑えて他世代に負担させたい団塊世代のコラボの前にはもはや無理な話なのかもしれない。
読者の皆さんはいかに考えるだろうか。
『Wedge』2022年8月号では、『「子育て支援」や「女性活躍」を〝理念〟や〝主観〟だけで語るな』を特集しております。選挙の度に、各政党がこぞって「子育て支援の拡充」や「女性活躍社会の実現」を訴えかけるが、世界の先進国の中で、これらの分野におけるわが国の歩みが遅いのはなぜだろうか。改めて日本における子育て支援・女性活躍のあり方を考えてみよう。
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