(1)尖閣諸島に領土の係争があることを認めない。
(2)過去の両国指導者が合意した(と中国が主張する)領有権「棚上げ」を認めない。
(3)中日双方の主張が異なるという国際社会公認の事実を認めない。
3点目については中国側の見方にも諸説あり、上記(3)よりも「領土問題としての対話に応じない」という日本政府の対応を指している場合が多い。
複数の日中関係筋によると、王毅も6月末、日本の要人と会談した際、この3点に言及し、こう続けたという。
「安倍首相は『対話のドアを常にオープンにしている』と言っているが、(この3点がある限り)対話の『入り口』にも入れず、両国関係は硬直化し、問題解決の道筋も見えてこない」
安倍に「前向きなメッセージ」求める
対日政策に関わる中国外務省幹部は、日本政府に対して領土問題の存在と棚上げの2つを認めることを特に要求し、「安倍首相は対話の窓口を開いていると言いながら、実際には開いていない」と批判。「中国としても無理は言っていないし、これ以上事を荒立てるつもりもない。このような状況では(日本の出方を)静観するしかない」と漏らした。
前出・外務省幹部は、日本側に求めているのは「前向きなメッセージだ」と強調する。別の対日当局者も「安倍さんは、中国側が『首脳会談に条件を付けている』と言っているが、別に『3つのノー』が全部改まらないと会談に応じないと言っているわけではない」と解説した。
一方、官房長官・菅義偉は「中国側との間で、棚上げや現状維持で合意した事実はないし、棚上げすべき問題も存在しないのが政府の公式的な立場だ」と強調している。中国共産党・政府は7月21日投開票の参院選後に、「尖閣問題で一切妥協しない」とする安倍から対中政策でどういうメッセージが出てくるか見極め、新たな対応を決める方針だ。
「これを『棚上げ』と呼んだ」
1972年の国交正常化の際、外務省条約課長として交渉に深く関与した栗山尚一元外務事務次官が、外務省OBによる冊子「霞関会会報」2013年5月号に寄稿した「尖閣諸島問題を考える」という文章が、話題となっている。日本側外交官だけでなく、中国外務省当局者も「注目している」とする文章である。田中角栄首相と大平正芳外相に随行した栗山は当時をこう振り返っている。