2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年7月17日

 中国のインターネット上では、ブルネイで王毅と岸田がすれ違う写真が掲載され、それだけで反発が広がった。

 中国政府は結局、日中外相同士が接触すれば、「お互いに尖閣などに関する主張を展開せねばならず、日中関係改善にとってマイナスになる」(日中関係筋)という判断があった。

 李肇星や楊潔篪ら、「日本通」でない歴代外相ならば、日本の外相と会って一方的に中国の主張を言い、仮にけんか別れ状態になっても、国内では評価されるかもしれない。しかし一貫して「日本畑」を歩み、駐日大使も務めた「日本通」外相の王毅は、一方通行的な会談で終わった時、日本国内でさらに嫌中感情が高まるかを熟知している。今は「何も動かない方がいい」と考えた結果だった。

王毅外相、「日本通」の苦悩

 ブルネイで王毅は、われわれ日本人記者が近寄って取材しても、非常に親切に対応してくれた。ただお互いに日本語ではなく、中国語でやり取りし、テレビカメラには非常に神経を尖らせた。日本人記者と日本語で話している映像が流れれば、「売国奴」と国内で批判が高まることは言うまでもない。

 実際に王毅は、北京においても「会っても『会った』と言わない」外交を展開している。3月の外相就任後、日本から多くの古き友人が北京を訪れ、「王毅さんに会いたい」との希望が寄せられている。しかし中国外務省のウェブサイトを見ても、王が日本の要人と会談したとの発表はなく、「会っていない」ことになっている。実際には中国政府関係者によると、たびたび日本の「古き友人」と会見している。

 さらに歴代外相と違い、どれだけ日中関係が悪化していても、日本を含めた外国メディア記者の前で日本の悪口は言わなかった。その意味するところについて対日関係者は明確に解説する。

 「習近平国家主席は、江沢民やその下で外相として対日政策を統括した唐家璇(現中日友好協会会長)が、小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝問題の際、日本国民の対中感情を悪化させる対日政策を展開したが、それを繰り返したくないと考えている」

中国が反発する日本の「3つのノー」

 しかしながら日本国内では、外相会談に前向きでなかったとして中国側への批判が強いのは事実である。しかも首脳会談に「条件」を付けている。条件とは一体何なのか。

 4月末以降、中日友好協会会長・唐家璇は、北京を訪れた複数の日中友好団体代表団と会見した際、尖閣問題をめぐる日本政府の「3つのノー」(三不承認)政策について述べ、「受け入れられない」との立場を示している。中国側の主張する日本の「3つのノー」とは次のことを指す。


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