2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年4月18日

 アナス・フォー・ラスムセン前北大西洋条約機構(NATO)事務総長が、中国の経済的威圧には民主主義諸国が一体となって集団的に対抗することが有効であると、3月28日付の 米国外交専門メディア「フォーリン・ポリシー」で述べている。

(Rawpixel/iZhenya/gettyimages)

 豪州が中国における新型コロナウイルスの発生起源の調査を要請した時、中国は豪州ワインに100%を超える関税を課した。豪州ワインの対中輸出は 2020年の8億7000万ドルから2022年には830万ドルに激減した。リトアニアが首都ビリニュスに台湾の代表事務所を設けた時、中国は欧州の供給網からリトアニアの産品を除外するよう圧力をかけた。

 北京は古い独裁者の手法を使っている。ロシアも近隣諸国を勢力圏に閉じ込めておくために経済的恐喝を使って来た。22年のウクライナ侵攻後、プーチンは、エネルギー不足が欧州を分断しえると考えたが、欧州および民主主義の世界は、ウクライナ支援とロシア石油・ガスからの脱却の両面で、結束して対応した。

 中国に対しても、同様に結束した対応がより有効であろう。北京は小さな国を次々と狙い撃ちするが、世界の国内総生産(GDP)の 60%を占める民主主義世界の統合された経済力に直面すれば、同じ事はできないだろう。NATO条約第5条の経済版を経済的威圧に適用すべきである。

 「経済の第5条」は、標的とされた民主主義国あるいは企業に対する支援を含む必要がある。民主主義諸国は相互に支援し合い、輸入禁止や過剰な関税の対象とされた産品に別途の市場を提供することとなる。

 この方法は効果的であると既に証明されている。2020年に中国がリトアニア産品の輸入を禁止した時、リトアニアのビール・メーカーにとって惨事だと思われたが、中国からの注文が干上がる一方、台湾からの注文は激増した。2021年、このメーカーは2020年の23倍を超える量のビールを台湾に輸出した。経済第5条の下では、自由諸国の間で補償的な貿易を大規模に行い得るだろう。

 中国の経済的威嚇に対抗する必要性により多くの国が目覚めつつある。欧州連合(EU)は威圧に対抗する手段を開発した。これによって、加盟国の一つが標的とされた場合、EUは貿易、投資及び資金的措置をもって報復する権限を有することになった。


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