2024年11月27日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年4月18日

 この論説でラスムセンが提案しているのは、この種の対抗措置をより効果的なものとするため、民主主義諸国全体による集団的な仕組みとすることである。それをNATO条約第5条になぞらえて「経済の第5条」と呼んでいる。具体化すれば、有効かも知れない。この論説が指摘するように、経済的威圧に対する報復よりも、その被害国に対する支援策がむしろ有効である場合が多いのではないかと思われる。しかし、どういう風に組織化し得るのかは不明である。

 中国による経済的威圧は不愉快極まる。成程、この構想は民主主義諸国が結束して権威主義の諸国に対抗するとの趣旨の民主主義サミットにはもってこいかも知れない。しかし、残念ながら、この構想がグローバル・サウスの積極的関心を引くことにはならないであろう。

原則不在の秩序に居心地の良さを感じるグローバル・サウス

 「習近平は米国が主導する世界秩序の不可避的な衰退を信じている。彼はこの秩序を大国による取り引き的な体制に捻じ曲げることを狙っている。こうしたビジョンの危険性、あるいはその世界中での強いアピールを過小評価してはならない」と3月25日付の英エコノミスト誌は警告している。

 中国とロシアは多極化の世界の実現とか国際関係における民主主義の促進などと言っているが、彼らが狙う世界は、大国同士の取り引きが律する限りにおいて法の支配、ルール、人権に拘泥しない原則不在の秩序(あるいは無秩序)であり、そこにグローバル・サウスが居心地の良さを見出している可能性がある。

 彼らは国連を重視するようなことも言っているが、彼らには国連は安保理の拒否権故に大国支配の道具と映っているかもしれない。民主主義と権威主義の対決の構図による大袈裟な構想を提案する前に、考えるべきことがあるように思われる。

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