経営者自身の問題もある。牛丼チェーン大手の吉野家ホールディングスの元常務による「生娘・シャブ漬け」といった不適説発言や、石油元売り大手ENEOS(エネオス)ホールディングスの元会長による女性への不適切行為などは記憶に新しい。
こうした不品行は個人の不適切な言動にとどまらず、会社全体の評判低下につながり、さらに多くの人々の記憶に長く残る。エネオスは経営層にまで研修を行って再発防止や信頼回復を図る方針を打ち出した。
国際情勢による影響も
国際的な対応も重要だ。ロシアのウクライナ侵略をめぐり、ロシア国内でビジネスを展開していた多くの企業が撤退した。例えば、米外食大手マクドナルドやスターバックス、スウェーデンのアパレル大手H&Mなどのグローバル企業は、相次いでロシアでのビジネスから手を引いている。
人権問題で疑義のある国での調達や事業展開も企業の国際的な評価に関わる。実際、強制労働の懸念がある地域で生産された物品の輸入や取引を禁止する動きが国際的に広がっている中で、日本の企業も例外ではない。
ミャンマーでの事業活動が国軍への利益提供につながりかねないとの懸念から、飲料やエネルギー関連を含む日本企業がミャンマーからの事業撤退を表明した。もはや各国の政治・経済動向や地政学的リスク、環境、人権など国際的な課題解決とは無縁でいられなくなっているのである。
レピュテーションリスクに見舞われると、株式を上場している企業は株価に瞬時に跳ね返る。迷惑動画の被害を受けたスシローを傘下に持つFOOD&LIFE COMPANIESの株価は大幅に下落し、時価総額が一時、約170億円失われたとされる。製品に起因する重大事故をめぐっては、特に海外では巨額の賠償金を支払うリスクや、経営者責任の追及、リコールなどもある。
こうしたことから企業はリスクの重さに敏感になっている。特にSNSの情報拡散のスピードが非常に速いため、ブランドを毀損される圧力は以前とは比べものにならないぐらい大きい。
このため保険会社では企業のレピュテーションリスクに向けた保険を売り出すところも出ている。企業価値の毀損や収益に対する影響を定量的に把握するのは難しく、これまで保険にはなじまないとされてきたが、最近は企業のリスクを包括的に補償する保険も販売されている。