2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月16日

 議長国日本が選択したアウトリーチ(招待)8か国はどこか。まず、インド。昨今のヒンズー至上主義伸長の流れの中でインドの民主主義の在り方につき議論がない訳ではないが、今回インドは20カ国・地域(G20)の議長国として招待された。インドについては、その重要性と影響力の伸長から見れば、今後とも継続的にG7に招待すべきだろう。

 一方、せっかくアジアで開催されるG7サミットであることを反映して、昨年とは異なり、広島には東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国であるインドネシア、更には太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国のクック諸島が招待されている。インドネシアでは民主主義は相当力強く根付いているが、汚職の根強い存在などから欧米において批判がない訳ではない。インドネシアは2040年代には日本のGDPを越えて世界第4位の経済規模になるポテンシャルのある国であり、中国と対峙する上でも極めて重要な同志国だ。今回はASEAN議長国の資格により自然に招待できたが、今後インドネシアのような国をG7プロセスにどのように巻き込んでいくか、知恵を絞る必要があるだろう。

G7招待国に見る日本の狙い

 実は、ここから先の日本の選択が面白い。議長国といった資格とは別に選ばれたのは、豪州、韓国、ブラジル、そして、ベトナムだ。豪州は、言わずと知れたクアッドのパートナーで、日本にとっては準同盟国と言ってもよく、自然な選択だ。韓国の選択は、昨今の日韓関係改善の流れに沿い、韓国、より言えば、ユン大統領重視の姿勢を示すもので、日米韓の結束を首脳レベルで示す機会にもなり、外交的意義は極めて大きい。

 そしてベトナム。この論説も指摘するようにベトナムは民主主義国ではないが、バイデン政権が国家安全保障戦略の中でパートナーとなり得る国の資格とする「ルールに基づく秩序を支援する国」には当たるだろう。それ以上に、ベトナムは日本と安全保障上の問題意識を共有する国だ。議長国であるインドネシアに加えベトナムを招待するのは他のASEAN諸国との関係で若干のリスクは有ろうが、政府は良い大局的・戦略的決断をした。

 最後のブラジルについては、中南米への配慮もあるが、BRICSに切り込んでいく試みでもあろう。更に、ルーラ大統領訪中を踏まえれば、G7は、中国との関係での立ち位置を含めてできるだけ「こちら」の陣営に近付ける機会となったのではないか。

 このように、民主主義いかんに関わらず、グローバルサウス(南半球を中心とする新興・途上国)といった十羽一絡げの対応もとらず、戦略的に協働する相手を個別に選んでいくことこそ、戦略的外交の神髄であろう。

   
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