2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2023年4月26日

 ウクライナの戦場でロシアがこのまま劣勢を挽回できなければ、プーチン大統領はその威信を失墜し、国内は1991年のソ連崩壊に似た混乱に陥る可能性が高い。そして「ロシア連邦」は崩壊するという議論も始まった。そのこと自体重大だ。

 しかし、その後ロシアはどうなるのか? こちらの方がもっと重大だ。成り行き次第ではユーラシアの地政学は一変する。日本での主要7カ国首脳会議(G7サミット)はこういうグローバルな地殻変動が出現しつつある、まさにその重要な時に行われる。

(Serhii Ivashchuk/Akarawut Lohacharoenvanich/gettyimages)

ロシア連邦は崩壊するのか?

 英国のシンクタンク「王立国際問題研究所(チャタムハウス)」のティモシー・アッシュ研究員は、2023年1月21日付のウクライナの英字紙「キーウ・ポスト」に寄稿し、ロシアの敗退は避けられないとし、そうなればロシアは複数の国家に分裂すると論じた(”Outlook for the war in Ukraine”January 21, 2023)。

 抑々、ロシアという国は89の主体──21の共和国、6つの地方、2つの連邦直轄都市(モスクワとサンクトペテルブルグ)、49の州、1つの自治州と10の自治管区──によって構成されている。ロシア連邦が分裂した場合、約20近くの共和国が誕生するとアッシュ研究員は予測する。

 ロシア連邦の分裂はプーチン大統領がウクライナ侵攻で目指した「大ロシア」再生とは真逆の結末だ。「分裂したロシア連邦は崩壊し、プーチン時代が終わる可能性は十分にある」とこの研究員は論じた。

 米国のバーンズ米中央情報局(CIA)長官はプーチン氏に対しもっと手厳しい。ウクライナにおける軍事作戦はプーチン大統領の「壮大な戦略的失敗」だった──。バーンズ長官は4月11日、ヒューストンのライス大学ベーカー公共政策研究所の講演会でそう断じた。そしてロシアは生き残りのために中国依存を加速させると長官は強調した(”Russia risks becoming an 'economic colony of China' following its invasion of Ukraine, says CIA director”Business Insider Apr 12, 2023,)。

 更に同長官は「ロシアは(戦場で)多大な人的・物質的損失を出しているだけではない。特殊部隊や指揮官が屈辱を味わい、ロシア軍の弱体ぶりが白日の下にさらされたばかりか、ロシア経済も制裁と貿易制限、1000社を超える西側企業の大脱出による長期的ダメージに喘いでいる。ロシアは中国の経済的な植民地になる。中国無しにはロシアは経済を維持できなくなっている」と論じた。

 そして「ロシア側は、この戦争を持久戦に持ち込めば、西側は音を上げるので、最後は勝てると考えているが、これもプーチン大統領のいつもの判断の間違いだ」と切り捨てた。


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