2023年2月、中国の王毅外交担当国務委員は西欧諸国を訪問し、22日にはプーチン大統領と会談した。中国外交部は24日公式サイトを通じて「ウクライナ危機の政治的解決に関する中国の立場」と題する声明を発表した。「中国の和平提案」とされるものだ。その後、中国の仲介で3月10日にはイランとサウジアラビアが、7年に及ぶ断交を解消し、外交関係を正常化させることで合意した。
最近、中国は外交的に世間の耳目を引くような行動に打って出ている。だが「和平提案」でも中国はロシアのウクライナ攻撃を侵略と認めず、ロシア軍の撤退も求めていない。結局中国は実質的にロシアの肩を持ち、真の和平に向けた具体的貢献ではないことは明らかだ。
中国は心配している
このように中国は「和平を求める新しい使者」として活発に動いているようにみえるが、本当は深く心配している筈だ。一言で云うとロシアがユーラシアをハチャメチャにしてしまうのではないかと云う心配だ。
プーチン大統領がこの戦争指導で躓けばユーラシアに混乱を生む危険がある。悪くするとロシアは民主化してしまう……。中国が深刻に危惧している問題だ。
ロシア国内が混乱して4000キロメートルの中露国境の向こうでロシアの個々の構成共和国が勝手な行動に出れば問題だが、状況次第で中国は影響力を伸長出来る。しかし、もしかするとロシアが全領域で民主化して米欧及び日本の友好国になるかもしれない。そうなると全面的に中国に不利だ。
元々「専制ロシア」は中国にとっては貴重な財産なのだ。カーネギー財団のガブエフ上級研究員はフォーリンアフェアーズ誌で、「ロシアは中国の召使だ」と規定したことがある(「China’s New Vassal-How the War in Ukraine Turned Moscow into Beijing’s Junior Partner」Alexander Gavuev、August 9, 2022)
ロシアが民主化したら、大いに役に立つ「召使」を失うだけの話ではない。私見では、ロシアの民主化は中国にとり地政学的な大失策だ。
元々、中露は専制強硬同盟を構成し、国際関係を差配して西側民主同盟への対抗軸となってきた。中露は国際関係でほぼすべての局面で共同作業をしてきた。ロシアが民主化してしまえばそれが消滅するのだ。