日本が自由貿易圏の拡張を
昔と違いがあるとすれば、今のリスクは一層大きく、かつグローバルになっていることである。困難ではあるが、企業の決定を通じて、市場の中で解決していく。友人は変わるかもしれない。それは以前にもあったリスクである。
過去20年の教訓があるとすれば、経済や企業は中国への一辺倒な依存は避けるべきということだろう。東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドなど「第二の中国」の確保の重要性は、米中対立の前から言われてきたことである。
国家がやるべきことは、それを見越して、自由貿易圏の拡大などを図り、企業の活動のスペースを整備することであろう。日本は環太平洋連携協定(TPP)を持ち、東アジア地域的包括的経済連携(RCEP)を有しており、今やかなり有利な立場にあると言えるのではないか。しかしインドなど日本が自由貿易協定(FTA)未締結の途上国と将来のサプライチェーン拡大を想定して、FTAや経済連携を拡大していくことが重要だ。
FTAは引き続き重要だ。それは「FTAショアリング」と呼んでも良いかもしれない。かつて、韓国の李明博大統領が非常に興味深い発言をしていた。FTAとは自らの「経済領土」を拡大することだ、韓国の政治国土は小さいが、経済領土はFTAにより米欧を含む巨大なものになった旨を述べていた。正にそうではないだろうか。
米国は、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を有する強みはあるが、インド太平洋ではFTAやFTAに代わる体制を欠いている。いずれ改めてTPPへの参加を真剣に考えねばならない状況になるのではないか。