2024年12月22日(日)

バイデンのアメリカ

2023年4月19日

 米国経済はピークに達し、いずれ中国に追い越される――。巷間、対米悲観論がささやかれる中で、伝統ある英国の有力経済誌「エコノミスト」最新号(4月13日付け)は、さまざまなデータを駆使した米国特集記事を組み、結論として「米国の経済パフォーマンスの実際は、目を見張るものがあり、今後も繁栄は続く」との大胆な楽観論を展開、話題を集めている。

(bennymarty/gettyimages)

後ろ向きな米国内で示される数字

 「わが国経済は世界貿易に翻弄され衰退に向かっている」「私は大統領として、再び偉大なアメリカを取り戻す」――。2015年、ドナルド・トランプ氏が米国経済悲観主義を唱えて大統領選に立候補し、当選後「Make America Great Again」(MAGA)を政権の看板政策に掲げた保護貿易主義を推進してきたことは、まだ記憶に新しい。

 将来の経済展望に関する各種世論調査では、「次世代の人の暮らしは今より悪化する」との悲観論が大勢を占めている。ミシガン大学が1946年以来、毎年月ごとに行ってきた消費者意識調査も、「景況感は数年先まで下降線をたどる」との最新データを示している。

 そして、こうした悲観的見方の背景として、①貧富の差の拡大、②働き盛り世代層に占める未就労者の増加、③スーパーリッチによる富の寡占、④国力の基盤となる中産階級の縮小、⑤学力の低下、⑥インフラの老朽化――などの問題点が指摘されてきた。

 しかし今回、「エコノミスト」誌(電子版)は、米国経済ピーク説や一般市民の抱く懸念をよそに、「その経済力は過小評価されており、実際は驚くほどの成果を生んでいる」の見方を示し、今後についても「米国は世界で最も富裕で、生産的で、革新的な経済大国にとどまり、数々のインプレッシブな経済指標が示す通り、追随諸国にさらに水をあけつつある」と明快に断じた。

 その論拠として、第一に挙げているのが、国内総生産(GDP)の推移だ。

 「1990年の米国GDPは、世界経済全体の4分の1を占めていたが、中国が高度成長を遂げてきた30年後の今日もそのシェアは変わっていない。富裕諸国における優位性も圧倒的なものがあり、主要7カ国(G7)諸国全体のGDPに占める米国シェアは1990年当時の40%から、58%に逆に拡大している。国民平均所得は、日欧諸国と比較して一段と早いペースで増加しており、購買力についても、全米50州中〝最貧州〟のミシシッピ州民の方が、フランスを上回っている」という。


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