2024年12月9日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年3月23日

 中国発の大人気動画アプリ「TikTok」(ティックトック)に逆風が吹いている。米国では利用禁止、あるいはTikTok北米事業の売却が命じられる公算が高まっている。いったい何が起きているのか?

(AP/アフロ)

米国内で広がる調査

 TikTokをめぐる米国の規制はきわめて複雑で、わかりづらい。まずその経緯を整理しよう。

 2020年8月、トランプ前大統領は米国におけるTikTokの利用や提供を禁止する大統領令を公布した。安全保障上の懸念を理由としたものだが、TikTok側は大統領令差し止めを求めて提訴し、裁判所は法的根拠が弱いとして差し止めを命じた。最終的に21年6月にバイデン大統領が正式に大統領令を撤回している。

 この大統領令とは別に、対米外国投資委員会(CFIUS)が19年から調査を進めていた。CFIUSは外国企業が米企業を買収した際に、安全保障上の問題がないかを検査する機関である。

 TikTokを運営するバイトダンスは17年末に米動画アプリ企業ミュージカリーを買収し、北米事業の足がかりを築いた。19年から始まった審査は現在にいたるまで続いているもようで、米紙ウォールストリージャーナルの報道によると、この3月にミュージカリーを引き継いだTikTokの北米事業を売却するよう勧告したという。

TikTokの運営法人は米国、英国、シンガポールで分かれている 写真を拡大

 なお、もしこの売却が実現した場合でも、日本には影響がないと見られる。TikTokを運営する法人は英国、米国、シンガポールなどに分散している。ミュージカリーの買収無効化という論理からすると、売却命令の対象となるのは米国法人が管轄する北米事業に限定される可能性が高いためだ。その場合、米国のTikTokとそれ以外の国のTikTokは別法人が運営するサービスという奇妙な状況になるのかもしれない。

 大統領令、CFIUSの調査に加えて、新たに米司法省による調査が始まった。昨年末、バイトダンス内部のリーク情報を得ていた米フォーブス誌の記者に対し、バイトダンス従業員が位置データを取得していたことが明らかとなった。リークした人物を特定するためだったというが、このユーザー情報の流用を司法省は問題視したとみられる。

 この他にも欧州やカナダ、日本では、政府関連の端末からTikTokアプリの削除が定められるなど、TikTok包囲網は米国外にも広がる気配もある。


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