2024年11月22日(金)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年3月23日

高まるウェブと外資への懸念

 TikTokは懸念するに足る実力を持っていることは確かだ。しかし、フェイスブックやツイッター、ユーチューブなど他のソーシャルメディア、動画サービスにも同じことが言える。そうしたサービスとTikTokの違いは米企業か、中国企業かという〝所属国〟によるところが大きい。

 となると、外資排除というアンフェアなやり口のようにも見える。ただ、注意すべきはインターネットサービスが持つ影響力が年々拡大している点にあるだろう。テレビは見ないでウェブばかり見ているという人も増えている。そのテレビでは米国や日本でも外資規制があることを考えると、このままインターネットサービスの影響力が高まり続ければ、テレビに準じた外資規制が導入されても不思議ではない。

 そう考えると、外資によるウェブメディアやソーシャルメディア、動画サービスの運営が原則として禁止されている中国のネット規制は、世界をリードする取り組みといえるのだろうか。

 また、中国ならではの問題もある。同国では、企業や市民に国家の情報活動に協力する義務がある。17年に制定された中国国家情報法第7条には、「いかなる組織および国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助および協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない」と明記されている。いや、たとえこうした法律がなかったとしても、中国の企業や市民が中国政府の要請に抗うことは可能だろうか。

 バイトダンスは19年以来、こうした懸念を払拭するべく、さまざまな取り組みを続けてきた。TikTokが有する個人のデータは中国からはアクセスできなくすること、海外のデータは現地のデータセンターで記録しその運営は信頼できる第三者企業に委託することなどの対策によってリスクに対応できるとの主張だ。

 ちなみに、バイトダンスはもともと海外でのサービスに、中国EC(電子商取引)大手アリババグループのクラウドサーバーを利用していたが、現在はこれを取りやめている。アリババ・クラウドは一部大手クライアントの離脱により売上が減少したことを発表しており、実際に取り組みを進めていることがうかがえる

 3月23日に米下院でTikTokに関する公聴会が開催され、TikTokの周受資(ジョウ・ショウズー)最高経営責任者(CEO)が安全確保のための取り組みを説明する。ただ、その訴えが支持される可能性は低いだろう。どのような取り組みをしようとも、バックドアを設けるなどなんらかの企みをしているのではとの疑心暗鬼を払拭することは難しい。

 米国による制裁という点では先輩格にあたるのが、中国通信機器・端末大手のファーウェイだ。同社の立場もよく似ている。

 ファーウェイの基地局や携帯電話を使えば情報が漏洩するかもしれない、国家安全に問題がでるかもしれないと懸念された。ファーウェイはソースコードの公開など安全確保のためのさまざまな提案を行ったが、結局受け入れられることはなかった。

 世界的な経済大国、デジタル大国となった中国からは、続々と競争力のあるサービスやイノベーションが生まれている。世界展開を目指す企業も多いが、中国という背景がそのネックとなる。

 どのような手順を踏めば、疑心暗鬼を招かずに世界でサービスを展開できるのか。中国政府も巻き込んだ形でのルール作りができなければ、ファーウェイやTikTokのような事例は増え続けるのではないか。

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