2024年2月22日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年4月17日

 昨秋の第20回共産党大会から始まった人事の季節は、3月初めの第14回全国人民代表大会で一段落した。党と政府の中核を「習家班」と呼ばれる李強首相以下の側近で固めた結果から判断して、やはり習近平国家主席にとっては満額回答に近い人事だった。であればこそ彼にとっては共産党大会も全人代も、共に「勝利の大会」であったに違いない。

(cbarnesphotography/gettyimages・dvids・Roger-Viollet/アフロ)

 中国の統治システムの根幹である党国体制に基づくなら、党と政府の枢要ポストを習家班で掌握しただけに、過去の10年間(第1、2期政権)とは比較にならないほどに強度を増した3期目の習政権は党による一元的統治を推し進めることになるはずだ。

 ということは北京の権力中枢で〝驚天動地の大異変〟でも起こらない限り、少なくとも今後5年間、中国では強固な政権基盤を背景にした習近平一強体制が続き、日本はもとより、国際社会全体が習政権に率いられた中国の動きに一喜一憂し、極めて高い頻度で振り回されることを覚悟しておかなければならないだろう。

 たとえば現在の国際社会における最大の不安定要因であるウクライナ戦争の帰趨にしても、好むと好まざるに拘わらず、習国家主席抜きには語れそうにない。ましてや中台両岸関係――「台湾有事」――においておや、である。

習近平における「社会主義の核心的価値観」

 敢えて政権3期目の目標を推し量るなら、3月の全人代の閉会演説において習国家主席が熱く語った「富強・民主・文明・調和の美しい社会主義中国式現代化強国の建設」だと思われる。だが、中国語表現に特徴的に見られる美辞麗句と抽象表現が重なっているだけに、どうにも具体像が浮かんでこない。

 過去2期10年に及んだ習政権が掲げてきた「習近平新時代中国特色社会主義思想」に裏打ちされていることは間違いないだろうが、これまたゴテゴテと漢字が重なるばかりで実態がハッキリしない。そこで「社会主義の核心的価値観」というキーワードを援用して、次のように腑分けしてみた。なおカッコ内は日本語訳。

・国家建設の目標=「富強・民主・文明・和諧(調和・協調)

・社会の建設理念=「自由・平等・公正・法治」

・国民の道徳規範=「愛国・敬業(勤勉)・誠信(篤実・誠意)・友情」

 ここで厄介なのが、歴代共産党政権が好んで使う「中国式」やら「社会主義」などのお馴染みの〝接頭語〟である。

 たとえば民主・自由・平等・公正・法治などにしても、西側が説く「普遍的価値」とは違っているだけではなく、それよりも優れていると確信している風が色濃く感じられるばかりか、ご都合主義的な色合いが強いだけに、やはり具体像は捉え難い。「中国式」の3文字は「中国式民主」からはじまって「中国式法治」まで融通無碍で、じつに不可解・身勝手で扱い難い。

 また習国家主席は中国トップの立場から、国際社会に向かって「全人類共通の価値」として「平和・発展・公平・正義・民主・自由」の理念を掲げるが、ここでも「中国式」の3文字で巧みにコーティングされていることを忘れてはならない。

 このように共産党式修辞法の解読は簡単ではないが、敢えて習国家主席の狙いを忖度してみるなら、習政権3期目の目標は内政面では「富強・民主・文明・調和の美しい社会主義中国式現代化強国の建設」であり、外交面では「中国式」の「全人類共通の価値」を基盤にした国際社会の再編となろうか。


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