2024年11月24日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年4月17日

 おそらくこの世代は、成人以後に文革を体験した一時代前の江沢民や胡錦濤の世代とも、物心つく頃には対外開放が動き出していた「七〇後」と呼ばれる1970年代生まれ以降の世代とも違い、以下のような中国像を描いていることは十分に予想できる。

 ―――「(建国から)20数年来、わが国各民族人民は毛主席を首(かしら)とする党中央の周囲に堅く団結し」、「『断固として中国を改造する』という高邁な気概を胸に天と戦い地と競い、自然改造闘争においても輝ける戦果を獲得した」 

 「われわれは既に偉大なる勝利を得た。だが今後の任務は艱難極まりなく更に偉大である。わが国人民は偉大なる領袖である毛主席の偉大なる領導を持ち、中国共産党という領導の核心を持ち、さらにマルクス・レーニン主義路線を持つがゆえに、断固として敗れることはなく、向かうところ敵なしである。われらの目標は必ず達成されなければならない」(『祖国的好山河』(上海人民出版社 1973年)――

 外国メディアから「経験不足」「イエスマン集団」「お小姓集団」などと批判されようが、習家班は習国家主席を「首」として、第3期習政権の目標達成に向かってまい進することだろう。その先に、大胆にも「超鄧赶毛(鄧小平を超えて、毛沢東に追い付き追い越す)」の4文字が思い描かれているかもしれない。

集団思考の陥穽

 とはいえ、第3期習政権が「断固として敗れることはなく、向かうところ敵なし」の状態で進むとは思えない。国内的には日常生活にまで及ぶ締め付けに対する不満が燻り反発・混乱が起こる可能性は否定できそうにない。国外では当然のように反中の動きが激化するだろう。だが敢えて指摘しておきたい点は、習家班のメンバーが同じ時代を同じ政治的環境で過ごしてきたゆえに、習国家主席を含む彼ら一同が集団思考に陥る危険性である。

 歴史上の多くの独裁国家で見られたように、国の運営に変調を来し頓挫や危険が生じると政権中枢に疑心暗鬼が生まれ、その時々に想起する個人的な感情や猜疑心に振り回され、軌道修正を試みることなく、頑なに正しことを進めていると信じる。あるいは信じたかったことに起因する数多くの失政が重なり、国民の政権離れを引き起こす。

 このような集団思考の弊害が、習政権3期目の前途に待ち構えているように思える。であればこそ、習政権3期目を見極めるキーワードは集団思考ではなかろうか。

 それにしても、である。ここまで巨大化した、いや巨大化させてしまった中国を世界に取り込む術は容易にはみつかりそうにない。主要7カ国(G7)の首脳がサミットと称して短期間集まり喧々囂々と〝白熱の議論〟を戦わせようとも、中国を震源とする国際社会の不安要因が低減し、緊張が緩和に向かうとも思えない。それゆえに当分の間、世界は〝現代化した毛沢東の亡霊〟と対峙することを覚悟しておくべきだろう。

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