断固として受け継ぐ毛沢東の遺志
2月1日、中国国家発展改革委員会は修正「国家以工代賑管理弁法」(8章52条)を公布した。その28条では「人力を基本とし可能な限り機械の使用を避け、民衆を労働者として組織し、可能な限り専門家集団に頼らない」ことを求めている。
28条に関し、共産党地方幹部の汚職を助長する一方で、農民酷使につながるとの批判が聞かれる。確かにそうだろう。
だが28条を敢えて〝素直〟に読んでみると、条文の行間から「自力更生」「為人民服務」「専(専門知識)より紅(政治的自覚)」といった文革華やかなりし頃に盛んに喧伝された毛沢東思想の神髄が透けて見えてくる。つまり「人力を基本とし可能な限り機械の使用を避け」(=自力更生)、「民衆を労働者として組織し」(=為人民服務)、「可能な限り専門家集団に頼らない」(=専より紅)となるわけだ。
こう見ると、国家以工代賑管理弁法の制定過程で毛沢東思想が働いたと考えるのは強ち思い過ごしとも思えない。
2月末に開催された共産党2中全会において習国家主席(総書記)が提案した「党と国家機構改革計画」が承認され、同大会後に発表されたコミュニケでは「党と国家機構の改革の重要性と緊急性を十分に認識せよ」と強調している。2中全会での承認事項は、直後に開会された全人代に提出され、承認を得て、実施に向けて動き出した。
一連の「改革」によって、従来は国務院総理(首相)に委ねられていた国務院(政府)は総書記の直轄機関に組み込まれる。かくて経済・金融政策は習家班の面々が取り仕切り、安全・公安部門は党の直接指導下に置かれることとなった。
安全・公安部門の「改革」の背景には、昨年11月に北京や上海など大都市の若者が「習近平退陣」を求めて繰り広げた「白紙運動」と呼ばれる反政府運動に対する強い警戒感が指摘されている。おそらく今後も習政権批判・共産党独裁反対の声は間欠的に起こるであろう。だが国家機構上、経済・金融から安全・公安部門まで、習国家主席による一元支配体制が貫かれた事実は決して軽んずべきではないはずだ。
1976年9月の毛沢東の死に際し、中国共産党中央委員会、中華人民共和国人民代表大会常務委員会、中華人民共和国国務院、中国共産党中央軍事員会は連名で「全党、全軍、全国各民族人民に告げる書」(以下、「告げる書」)を発表し、「毛主席は中国共産党、中国人民解放軍、中華人民共和国の創立者で英明な指導者である」と位置づけた後、「われわれは断固として毛主席の遺志を受け継ぐ」と宣言している。
今回の全人代で承認された一連の「改革」で注目すべきは、「告げる書」が強く訴えた「毛主席の遺志」の冒頭を飾る―――それだけに最重要事項であるはず――「党の一元化指導を強化し、党の団結と統一を固く擁護し、党中央の周囲に緊密に団結する」が達成されていると考えられる点である。であればこそ毛沢東の死から47年後、習国家主席は「断固として毛主席の遺志を受け継」いだと見なすこともできるだろう。