2024年12月22日(日)

お花畑の農業論にモノ申す

2023年5月3日

 大阪の堂島取引所によるコメ先物取引の「本上場の申請」に対して、農林水産省は2021年8月、自民党との議論を経て「不認可」とした。江戸時代に誕生した世界最古の先物市場に端を発するコメの先物取引が再び姿を消す瞬間だった。

(okugawa/gettyimages)

 その際に生まれたいわば「鬼っ子」が前回「コメ現物市場が今秋開設 なぜ必要なのか?」で取り上げたコメ現物市場の創設検討指示である。もちろん、公的な「コメ市場」の開設は前進だが、現物市場がフルに機能したからといっても市場に対するすべての要請に応えられるものでない。コメ現物市場が先渡市場、先物市場と分担・連携・総合化していくことが理想である。

 3つの市場の連携とはどのような形なのか。歴史的な正当性や世界の常識との乖離などを解説したい。

先物取引の必要性と不認可の要因

 前回も説明した通り、手持ちのコメを販売した生産者が次に考えるのは、種子の手当て、田植えの準備など「経営体として持続できる計画・計算が成り立つか」である。田植えが済んでしまっていれば、「生育途上のコメがいくらで売れるか」の展望と「次の経営を可能とするヘッジポジション確保」であろう。

 一方、コメを買い入れた流通業者にしてみれば、手持ちのコメの資産価値が下がらないように、「動産担保の価値」や「ヘッジ会計価値」の確定であろう。これらには、現物市場は応えられず、『先物市場』の出番となる。

 さらに、顧客を抱える流通業者では、要望に応えられる品ぞろえを目指して、収穫前に「玉の確保」を図っておきたい。ここは先渡市場の出番である。コメの取引は産地・品種・銘柄が多様であり、そうした特定のスペックを流通業者が生産者に指定し、数量を確保する。

 コメのような通常、一年一作、一回転の経営では、現物、先渡、先物の3市場が連携しあって機能を果たすことで、その需給価格の安定と生産者・消費者の経営・家計に貢献する。

 この中の一つコメの先物市場は、1730年に江戸幕府が公認した「堂島米会所」が世界初の組織的な先物取引所として誕生したが、日中戦争に伴う国家統制で休止となっていた。民主党政権下の2011年に堂島取引所(当時は関西商品取引所)および東京穀物商品取引所で試験上場として復活した。

 試験上場は2年ごとの期限で、4回延長してきた。次の期限が迫る中で、取引所が本上場への移行を申請したが、認められなかった。

 実需を伴う当業者の参加数や取引口座数の増加は十分であるとの取引所側の主張に対して、農水省は、生産者の参加が大きくは増えておらず生産・流通を円滑にする観点から不十分だと指摘した。コメの流通の半分以上を握る農業協同組合(JA)が「コメを投機の対象としてはならない」として市場に参加しなかったことが要因と言える。


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