エルドアン大統領が今回苦戦している最大の要因は経済の低迷だ。通貨リラの対ドル相場は昨年比、半分以下に下落。インフレ率も一時期は85%を超えるなど庶民の生活を直撃し、貧困世帯が増えた。
特に同氏は「インフレ抑制には金融引き締めが必要」というセオリーを否定して利上げを拒否。利上げを図った中央銀行総裁を解任し、市場の反発を買った。
同国では28日の決選投票について「大統領はたとえ負けても、どんな手を使ってでも居座るのではないか」との観測が広がっている。その〝お手本〟は先の米大統領選の結果を認めなかったトランプ氏だ。エルドアン氏は直前、居座りという見方に関し「馬鹿なことを言うな。国民が異なった決断をするならそれに従う」と否定しているが、そのまま発言を信じる向きは少ないだろう。
バイデン大統領をこき下ろす
今回の選挙の行方はエルドアン大統領がウクライナ戦争の調停や、北大西洋条約機構(NATO)のスウエーデンの加盟問題に拒否権を発動していることなどから国際的にもそのインパクトは大きい。
選挙に対する各国の見方をまとめると、米欧がエルドアン氏の敗北を望んでいるのに対し、ロシアのプーチン大統領は勝利を求めているというのが一つの構図だろう。特にバイデン政権は敗北を待ち望んでいるとされる。
ブッシュ、オバマ、トランプという最近の米大統領はエルドアン氏をホワイトハウスに招いて会談しているが、バイデン大統領とはまだ実現していない。民主主義などの理念を重んじるバイデン氏が反体制派やメディアを弾圧するエルドアン氏の強権的な姿勢に嫌悪感を抱いているというのは確かではないか。
さらにバイデン政権はトルコがNATOの一員であるにもかかわらず、対露制裁には加わらずプーチン氏と親密な関係を続け、ロシアから最新の対空システムを導入したことに怒っているという。米政権は半導体などロシアが輸入を阻止されている製品をトルコ経由で入手していると見ている。
エルドアン氏もバイデン大統領を敵視している姿勢を隠さない。選挙戦の演説で「バイデンは私を引きずり下ろすことを命じた。投票でその回答を突き付けよう」と支持者らに訴えた。米国のトルコ大使がクルチダルオール氏と先月会談したこともエルドアン氏の怒りに火を付けた。