2月6日未明に発生したトルコ大地震は隣国シリアと合わせ、犠牲者が東日本大震災時を上回り、2万5000人を超えた。被害の拡大に対し、エルドアン政権が建設ブームを煽り、耐震基準が軽視された結果の「人災」との声も強い。エルドアン大統領は5月14日の選挙で3選を目指しているが、地震対応への批判が続けば当選は危うく、政治生命は崖っぷちに立たされている。
建設産業は経済発展の〝宝石〟と賛美
エルドアン大統領は被災地の10州に3カ月の非常事態宣言を発令するなど対策に取り組んではいるが、地震発生から3日目に初めて被災地を回るなど対応が後手に回った感は否めない。政府一体となった効果的な救援活動も取れていないのが実情だ。
特に大統領が「これほどの大地震に備えるのは不可能だ」「日がたてば安心できるようになる」などと釈明を繰り返したことが、家族らの救出が全く進まない被災者らの怒りに火をつけ、SNSを中心に大統領への反発が広がった。犠牲者が連日急増するとともに、「人災」という声も出始めた。
というのもトルコでは、1999年に1万7000人が死亡した大地震が発生。以来、建物の耐震基準の整備などが叫ばれてきたが、2018年に「地震対策法」が成立するまで、事実上放置されてきた。
それ以前の古い建物は鉄筋量が少なく、地震には脆弱だった。だが、せっかく日本と同程度の耐震基準が定められた法律ができたものの、「実際には耐震基準がほとんど守られてこなかったのではないか」(地元アナリスト)というのも現実のようだ。
この背景には、全土で建設プロジェクトを積極的に推進したエルドアン大統領の姿勢がある。大統領は建設産業を経済発展の「宝石」と賛美して奨励し、この掛け声の下、耐震基準の順守はおざなりになり、基準に満たない手抜き工事の建物が数多く建設されたという。「そこには汚職の土壌もでき上った」(同)。今回の地震が起きる2週間前、野党の有力議員が政府の地震対策の無策ぶりを批判したのはそんな状況を踏まえたものだった。