エルドアン大統領はこうした政権の対応遅れの批判について、「社会不安を煽ったフェイクニュース」と非難し、反撃に出ている。これを受けたように、イスタンブールの検察当局が政府に批判的な記事を書いた記者2人を捜査、今後言論弾圧の動きが加速しそうな雲行きだ。
国際政治をかき回す「独裁者」
エルドアン大統領は03年に首相に就任してから権力を掌握、14年に大統領に鞍替え当選し、17年には首相を廃止して実権型の大統領に移行する憲法改正を行った。その手法は「独裁者」と呼ばれるほど強引で、16年のクーデター未遂事件では、5万人を逮捕、政府当局者15万人を追放した。
大統領は国際舞台で大国と対等に渡り合うようなパフォーマンスを内外に誇示し、指導力をアピールして権力固めを図った。米国のトランプ前大統領の懐に飛び込んで親しい関係になり、バイデン大統領には敵対するクルド人勢力を一掃するためとして、シリア侵攻に了承を求めた。ロシアのプーチン大統領とも会談を重ねた。ウクライナ戦争ではストップしていた食料輸出再開に尽力、停戦の仲介役にも名乗り出た。
フィンランドとスウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟問題では、敵対するクルド人勢力に両国が保護を与えていると不満を表明、「加盟にはメンバー全会一致の賛成が必要」という拒否権を盾に、自国の利益をあくまでも追及する構えを見せて米欧を振り回した。
シリア北東部の被災地域はエルドアン政権が支援する反政府勢力(反アサド政権勢力)が支配しており、地震で甚大な被害を受けた。この地域の住民は約450万人で、内戦難民も多い。しかし、トルコや国連の支援が十分に届かず、救出活動は困難を極めている。トルコは少なくとも、各国の援助がこの被災地域に円滑に届くよう手助けする必要がある。