2024年4月28日(日)

教養としての中東情勢

2022年4月13日

 トルコのエルドアン大統領がウクライナ戦争の停戦仲介に意欲を示し続けている。同国はロシアとウクライナ両国と良好な関係にあるが、機を見るに敏な大統領は戦争の調停で存在感を誇示することにより、経済悪化に伴う自らの政治的な危機を脱却、来年の大統領選挙での再選を狙っているようだ。

トルコのエルドアン大統領(中央)はロシアとウクライナの仲介を買って出て、停戦交渉をイスタンブールで開催させた(Ukrainian Foreign Ministry Press Service/AP/アフロ)

 エルドアン大統領はロシア軍の侵攻以降、ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と再三にわたって電話会談するなど停戦を仲介。3月10日には南部アンタルヤでロシアのラブロフ、ウクライナのクレバ両氏の外相会談を実現させた。

 同29日にはイスタンブールで停戦交渉を開催。ウクライナ側が新たな安全保障の枠組みと引き換えに「北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する」と提案、条件付きで「中立化」に踏み込んだ。ロシア側はクリミア半島のロシアの主権を認めていないなどとして、拒否する姿勢を示しているものの、提案が今後のたたき台になるのは間違いなく、舞台をしつらえたトルコの存在感が印象付けられた。

 しかし、ここにきて停戦交渉に大きな障害が出てきた。1つはウクライナの首都キーウ周辺でロシア軍による民間人の虐殺行為が次々に明るみに出て、ウクライナ側が容易には譲歩できないない状況になっていること、もう1つは東部でのロシア軍の大攻勢が切迫していることだ。

制裁に加わらない3つの理由

 ただ、戦闘が激化すれば、逆に停戦への圧力が高まるのも必定で、仲介するトルコの動きが活発化するとも見られている。エルドアン氏のロシア軍侵攻に対する立場は微妙だ。侵攻を批判はしているが、NATOの一員でありながら欧米の経済制裁には参加していない。その一方でウクライナには多数の武装ドローンを供与、軍事的に支援している。

 同氏がロシアへの制裁に加わらないのは第1に、ロシアとの経済的なつながりが深いこと、第2にプーチン氏とは同じ独裁的な政治手法から親しい関係にあること、第3に軍事的にもロシアから離れられない理由があるからだ。


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