2024年11月22日(金)

教養としての中東情勢

2023年5月15日

 エルドアン氏は「もう米大使とは会わない。米国には教訓を与えてやる」と息巻いた。エルドアン氏の米国に対する怒りは、バイデン氏が米大統領選挙期間中、「われわれはトルコの野党勢力を支持していることを明確にし、エルドアンには異なったアプローチを取るべきだ」と語っていたことを根に持っているのではないかみられる。

ロシアの明暗も分ける

 エルドアン氏が敗北すれば、一番打撃を受けるのがプーチン大統領であることは衆目の一致するところ。エルドアン氏はプーチン大統領とは何十回も会談してきた相手だ。気心が通じる数少ない友人の1人で、特にウクライナ戦争でNATOの動きを探る上でエルドアン氏の内部情報は重要だ。

 しかも、エルドアン氏がフィンランドのNATO加盟は承認したものの、スウエーデンについてはクルド人問題を理由に加盟に反対し続けていることに対し、「NATOの亀裂を生み、ロシアにとっての利益」と考えていることは間違いない。ウクライナ戦争で今後、和平交渉を開始する際にも、調停の場を提供したエルドアン氏の助けを借りたいところだろう。

 トルコがロシアからの石油や天然ガスの購入を増やしているのも戦費が必要なプーチン大統領にとっては有難い。なによりも経済制裁で孤立している中にあって、トルコがロシアの「輸出入の窓口」になっているのは貴重だし、ロシア人の観光地にもなっている。エルドアン氏が敗れれば、ロシアに対する好意的な姿勢が維持されない可能性もあり、プーチン氏にとっては大きなマイナスだろう。

 ベイルートの消息筋は「これまでのエルドアンの独裁的なやり方を考えると、決戦投票までに何があってもおかしくない。仮にエルドアンの敗色の見通しが濃いものになれば、クーデターの可能性さえ否定できない」と指摘した。選挙の前から結果が確定しているような国が多い中東で、民主国家を標ぼうしてきたトルコの真骨頂が問われている。

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