2024年3月2日(土)

有機農家対談 「ぼくたちの農業」

2013年7月31日

 農業生産のベースとしての自然には、功利主義的に考えても守るだけの十分なメリットがある。ぼくは基本的にはその考え方に近いです。小川さんが昆虫の力を活用するほどにはぼくは自然を活用できてないし、もっと活かせる余地はあるだろうと思います。そういう話は面白いよね。

 そうやって作られた野菜が美味しいか、安全か、ということ以上に、そういう農業のスタイルが市場価値になりうるのなら、いまある「有機・無農薬野菜」とは異なる新しい付加価値になる。「小川さんが定義した有機農業」ですよね。その考え方はぼくにはどんぴしゃです。すごくいい。

農家の売り物は野菜だけなのか

久松:AKB48のCDを買う人は、CDを純粋な音楽パッケージとして買っているんじゃなくて、彼女たちと体験を共有したくて買うわけですよね。

 純粋にニンジンそのもので勝負したら、ぼくより美味しいモノを作る人はいくらでもいます。糖度がどうとか、柔らかさがどうとか、その土俵にぼくは乗ってはダメなんですよ。

 いかに自分だけの土俵を作るかを真剣に考えなければいけない。「変わったものを作っています」路線を行くなら、まず小川さんを潰さないといけない(笑)。

小川:美味しさ勝負だけの農業なら、誰でもできるんです。土壌がよければ、適地適作・適期適作を守ればできてしまう。そこが逆に、農業で生活を成り立たせることを難しくしている。なぜならコスト意識の低い「ボランティア農家」が日本全国にいるからなんです。

 つまり年金をもらっているのに、死ぬまで農業を続けるんだ、タダみたいな値段でも構わないんだという農家が全国にいるんです。一生農家をすること自体は良いことかもしれませんが、これでは頑張っている現役世代の農家が報われない。じゃあどうするか、と考えて、たいていみんな「量」の勝負に行ってしまう。「質」も「それ以外の価値」もなかなか向上しない。

久松:量で勝負するなら徹底的にオペレーションコストを下げないといけない。コモディティの世界で価格競争が起こると、勝者は一人しかいません。一番安い値段を付けられる人だけが生き残れる。

 もしくは『奇跡のリンゴ』みたいに、自分だけの「世界一うまい」を定義することですよね。それができるならば、最良の戦略になる。でもやっぱり勝者は一人。零細農家が目指すことができるのは後者ですけど、そうではないやりかたは無限にありますよね。


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