2024年3月4日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月23日

 米ワシントン・ポスト紙モスクワ支局長らによる5月5日付の解説記事‘Wagner boss threatens to pull out of Bakhmut, slams Russian military’が、ロシアの傭兵組織ワグネルのリーダーがロシア軍を酷評し、ウクライナのバフムトから撤退すると脅している、と報じている。主要点は次の通り。

 ワグネル傭兵グループのリーダー、プリゴジンは5月5日、弾薬不足ゆえにバフムトから戦闘員を撤退させると発表した。プリゴジンはテレグラム・チャネルで声明とビデオを発表、ゲラシモフ参謀長がバフムトでのワグネルに代わる軍を出す命令に署名するように求め、ワグネルは5月10日には撤退すると述べた(注:実際には5月10日には撤退していない)。プリゴジンは「私はワグネル部隊をバフムトから撤退させる。弾薬なしでは彼らは意味なく死ぬだけだ」と述べた。

写真はイメージです(Dmitry Belyaev/gettyimages)

 痛烈な非難は、ロシアの戦場での指導者間での権力闘争の最新の現れであり、ウクライナの反転攻勢に準備する中で、軍事生産においてロシアが直面する困難を示す。

 5月5日深夜のビデオで、プリゴジンはバフムトで殺されたワグネル戦闘員の死骸の横に立ち、必要な弾薬の30%しか供給しなかったとの怒りに満ちた非難をショイグ国防相とゲラシモフ参謀長に浴びせている。プリゴジンはワグネルの戦場の成功に嫉妬した軍高官が意図的に弾薬の供給を減らし、5月9日の戦勝記念日の前にバフムトを占拠することを阻止したと非難した。5月9日の声明ではワグネルは必要な弾薬の10%しか入手しなかったと述べた。

 プリゴジンはショイグとゲラシモフは不必要に殺され負傷した何万人について責任を取るべきであり、「彼らの素人っぽいやり方が何万人ものロシア人を破壊した。これは許せない」と述べた。

 西側情報機関の推定によると、ワグネルは5万の戦闘員をウクライナで展開した。米国家安全保障会議(NSC)のカービー報道官は、12月以来殺害された2万人のうちほぼ半分がバフムトを攻略しようとしたワグネル戦闘員である、と述べた。

 プリゴジンの声明は、ロシアの軍事的失敗をあからさまに指摘している。プリゴジンは「前線の諸点での国防省の一連の失敗の後、ワグネルがウクライナ軍の注意をそらすために〝バフムト作戦〟を行う決定に至った。この後、ワグネル部隊は軍官僚の不興を買い、人為的弾薬供給停止が始まった」と述べた。

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 ワグネル軍団のプリゴジンとロシア軍の指導部との軋轢はこれまでも報じられてきたが、その度合いはもはや修復不可能な段階に達していることが、この解説記事に引用されているプリゴジン発言から明らかである。その後も、プリゴジンによるロシア軍批判は続いている。


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