2024年4月16日(火)

家庭医の日常

2023年5月25日

いかに食物アレルギーを予防するか

 食物アレルギーをどうやったら予防できるのかは、当事者にとっては切実な問題である。ただ、現在までのところ、質の高い臨床研究によるエビデンスに基づく推奨は多くない。

 まず、予防に効果があると推奨される薬はない。

 次に、母親の食事制限について。これについては、妊娠中と授乳中の食事制限の有益性を示すエビデンスは不足している。むしろ、母親が偏食によって栄養不良を起こさないように、バランス良く何でも食べることが推奨されている。

 子どもの栄養については、

(1)生後4〜6カ月で離乳食を開始する(開始を遅らせない)

(2)アレルギーを起こしやすい食物もこの時期に開始する

ことが推奨されている。

 少なくとも生後4〜6カ月は完全に母乳で育てることを推奨する専門家もいるが、人工乳(普通ミルク、加水分解乳、大豆乳)と比較した母乳の有益性を質の高い臨床研究で示したエビデンスは見つけることができなかった。

 乳幼児早期のアトピー性皮膚炎は食物アレルギーの危険因子となることが示されており、早期からアトピー性皮膚炎の治療を開始して、十分にコントロールしておくことが推奨される。

 両親を含む家族の生活習慣が大きく影響してくるので、実際に家庭医は、個々のエビデンスを参考にしつつも、家族の意向と生活習慣を考慮しながら一緒に予防策を相談することになる。

食物アレルギーによる心理的負担とQOL低下

 食物アレルギーでは、患者である子どもはもちろんだが、家族の苦労や心配も並大抵ではない。

 私たち医療者は、ともするとアレルギー反応を抑える治療にのみ関心がいきがちだが、食物アレルギーをもつ人とその家族の心理的な負担についても十分な理解とケアが必要だ。食物アレルギーによる生活の質(QOL)の低下とその苦痛が想像できなければいけない。

 特にここ数年、この問題の重要性を示す研究が発表されるようになっており、次のような問題が指摘されている。

・食物アレルギーはライフスタイルの変更を必要とする慢性の病気であり、家族全員に影響を与える可能性がある。

・食料品の買い物や外食の際には、偶発的な曝露(誤食)を避けるために細心の注意が必要であり、日常生活がストレスになる可能性がある。

・食物アレルゲンへの曝露とその結果として生じるアレルギー反応を恐れて、家族は休暇や社会的交流を制限する可能性がある。

・親は子どもの成長に影響を与える可能性のある栄養の摂取不足を懸念している。

・食物アレルギーを持つ子どもの世話をするために、親や介護者は労働時間を短縮したり仕事を辞めたりする必要があり、子どもの学校を変更したり、在宅での就学を希望するかもしれない。

・親の苦痛は、食物アレルギーを持つ子どもの健康関連のQOLの悪化と関連している。

・食物アレルギーのある子どもは、食物アレルギーのない子どもに比べて、親や介護者のいない場所に行くときの分離不安の増大と警戒心や恐怖の増大があり、食事に対する不安が大きくなる。

・全般的不安障害、社交不安、うつ病の症状が増加する。

・食物アレルギーに関連したいじめは、学齢期の子どもたちによく起こることが報告されており、食物アレルギーのある子どもたちにストレスや不安を引き起こす可能性がある。

・いじめには以下が含まれる場合がある:薬を持ち歩いていることをからかう / 食物アレルゲンに曝露すると脅す / アレルギーのある食べ物に触れさせる / 食物アレルゲンによる食品の意図的な汚染。

・30% 以上の子どもが、食物アレルギーが原因でいじめられたと報告している。

・最大25%の子どもが複数回いじめられた経験があると報告している。


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