2024年12月26日(木)

家庭医の日常

2023年4月29日

病気や症状、生活環境がそれぞれ異なる患者の相談に対し、患者の心身や生活すべてを診る家庭医がどのように診察して、健康を改善させていくか。患者とのやり取りを通じてその日常を伝える。
(LeventKonuk/gettyimages)

<本日の患者>
T.M.さん、36歳、男性、広告代理店勤務。

「T.M.さん、こんにちは」

「こんにちは、先生」

「この2カ月はどうでしたか」

「今年の春は、花粉がひどかったり黄砂がやって来たり、最近じゃ寒暖の差が激しくて心配したんですが、割と調子は良いです」

「そうですか。良かったですね。ではちょっと詳しく確認させて下さい」

 T.M.さんは、3年前に転勤でこの町に住むようになってから私のいる診療所に通院している。主な受診理由は喘息のケアだ。

 喘息は、家庭医の診療(プライマリ・ヘルス・ケア)で最も頻繁に遭遇する慢性の病気のひとつである。気管支の慢性的な炎症によって、過敏状態になった気道(呼吸によって移動する空気の通り道)が発作的に狭くなり(多くは可逆性)、喘鳴(主として息を吐くときに発生するゼーゼー、ヒューヒューなど連続した音)、咳、呼吸困難などの症状を起こす。

 わが国では、2004~06(平成16〜18)年度厚生労働省科学研究事業研究班による報告ぐらいしか国際比較が可能な喘息の全国調査が見当たらない。15年前のデータになるが、それでは、成人(20歳〜44歳)での「有症率」が9.4%、「有病率」が5.4%と報告されている。

 「有症率」と「有病率」の区別であるが、「過去12カ月以内に、ゼーゼー、ヒューヒューしたことがありますか」という問いにハイと答えた場合は、「喘息症状あり」として「有症率」に加えられる。一方、医師による喘息の診断に加え、喘息症状がある、もしくは抗喘息薬を使用している場合は、「喘息あり」として「有病率」として加えられる。

 国際的には医療の提供が不十分な地域も多いため、有病率よりも有症率で比較される場合が多い。


新着記事

»もっと見る